ばあちゃんの手作り味噌を再現 高校講師が事業化「自然なうまさを」

西日本新聞 古長 寛人

 亡き祖母に教わった漁村の手作り味噌(みそ)を伝えていこうと、北九州市の小倉商高非常勤講師の杉村陽子さん(38)が普及に励んでいる。小規模生産だが、自然なうまさにこだわった一品。昨年4月に販売を始め、祖母や購入者への感謝を込め「おかげさま味噌」と名付けた。ファンが急増する中、学校教育での活用も見据えている。

 杉村さんの祖母で2014年に89歳で亡くなった石川ヤヨイさんは山口県旧粟野村(現山口県下関市豊北町)出身。結婚後は北九州市小倉南区で生活した。小さな漁村の粟野では各家庭で味噌作りが盛んで、ヤヨイさんも家族に手作りの味噌汁を出し続けた。杉村さんは小さい頃から、そんな「おばあちゃんの味」が大好きだった。

 杉村さんは同高で「マーケティング」や「広告と販売促進」などを教えている。8年ほど前、ヤヨイさんの体の具合が悪くなったことを機に、作る人がめっきり減った「粟野の味噌」の伝承に乗り出した。休日に粟野を訪れ、ヤヨイさんの味を唯一受け継いだ叔母から指導を受けた。

 麦と米の合わせ味噌で、原料の大豆は国産無農薬にこだわる。普通の作り方と違う最大の点は熱処理をせずに熟成させること。杉村さんは「健康志向で、生きているこうじ菌本来の味が味わえる」と説明する。

 できた味噌は知人らにプレゼントしていたが、「就職や起業を夢見る若者を指導する上で、自分自身の実体験が役立つのではないか」と思い立ち、事業化を決断。昨年4月、同市戸畑区に作業場を構え「味噌屋あうん」を開業した。

 味噌は熱処理していないため、長期保存はできない。常温保存ではかびが付着する恐れがあり、10度以下での冷蔵保存と3カ月の賞味期限を設定している。口コミで購入した同市八幡東区の男性(75)は「味噌汁にすると、ふわっとした軽い感じと、独特の甘さがなんともいえない」と魅力を語る。

 知的障害のある男性が作業を手伝う。1回の製造は200キロが限度だが、販路拡大を目指して近く、インターネットによる販売も始めるという。杉村さんは「昔ながらの手作り味噌を通して、若者たちの就労体験の場になれば。障害がある人の雇用にもつなげたい」と意欲を見せる。(古長寛人)

 おかげさま味噌 ワンパック500グラム、650円(送料別)。電話受け付けのほか、北九州市若松区響町の産地直送市場「海と大地」でも販売。杉村さん=090(7168)4492。

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