違憲裁判は再審の対象外 菊池事件国賠判決 請求条件に明記なし

 違憲状態の裁判であるにもかかわらず、再審への道はやはり険しいのか-。初めてハンセン病特別法廷の違憲性を認めた菊池事件国賠訴訟の熊本地裁判決は、司法制度の不十分さも浮き彫りにした。この判決をハンセン病問題解決の確かな「一里塚」とするには、過去の過ちを見据える姿勢を司法全体が示す必要がある。

 「日本の再審制度の弱さが露呈した。憲法再審が認められていれば、より踏み込んだ判断になったのではないか」。判決が言い渡された26日、ハンセン病問題に詳しい内田博文・九州大名誉教授は会見でそう指摘した。

 再審請求の条件として刑事訴訟法が定めるのは「無罪にすべき明らかな証拠を新たに発見したとき」など。公判手続きの憲法違反は明記されていない。

 判決は「憲法違反が有罪判決に影響を及ぼすかという観点から慎重に検討しなければならない」との判断基準を提示。その上で菊池事件の審理が法の下の平等に違反し、非公開だった疑いがあっても「直ちに事実認定に影響を及ぼす手続き違反とは言えない」と原告側の主張を退けた。

 これまでにも法改正を訴えてきた徳田靖之・弁護団共同代表は、憲法違反が再審請求の条件に含まれていないのは「確定まで違憲が見過ごされる事態を想定しなかったためではないか」とみる。「憲法違反が認められた以上、放置が許されるはずがない」と力を込めた。

   ◆    ◆

 弁護団が指摘する「再審法制の不備」は、それだけではない。

 刑訴法は本人が死亡した場合の再審請求人を検察官と遺族に限る。判決は男性の遺族が現在は再審請求していないことも踏まえ、検察が再審を請求しなくても違法ではないと判断した。

 2019年6月、ハンセン病家族訴訟で熊本地裁判決は「隔離政策により、家族は憲法で保障された平穏に生活する権利を侵害され、個人の尊厳に関わる人生被害を受けた」と認めた。

 元患者の家族に対する差別や偏見は今も根強い。判決を受けて成立した家族補償法で補償金の支給認定を受けた人は、施行から3カ月を経ても国が想定する対象の3%にすぎない。菊池事件で死刑となった男性の遺族が再審を請求できないのも、差別を恐れているためだ。熊本大の岡田行雄教授(刑事法)は「家族が再審請求できるはずと言わんばかりの判断。極めて激しい『人生被害』の実情をあまりに軽視している」と批判する。

 過去の誤りがいくら認められても、実際の人権救済につながらなければ「仏作って魂入れず」になりかねない。岡田教授は「ハンセン病問題は最大規模の人権侵害。制度改正や柔軟な法の運用を司法全体で考えなければ、根本的な解決はおぼつかない」と話している。 (中原興平)

熊本総局が移転しました

熊本総局 移転先地図

西日本新聞熊本総局が移転しました。新しい総局は、熊本市中央区の熊本桜町バスターミナルに近い坪井川沿いです。電話、FAX番号も変更となりました。

▼移転先
住所 〒860―0805 熊本市中央区桜町2番17号第2甲斐田ビル9階
電話 096(323)1851
FAX 096(323)1853

熊本県の天気予報

PR

熊本 アクセスランキング

PR

注目のテーマ