「仕事ない」北京の出稼ぎ苦境 新型肺炎、帰省者戻れず企業活動停滞

西日本新聞 国際面 川原田 健雄

 【北京・川原田健雄】新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の拡大で中国の経済活動が停滞する中、都市部へ出稼ぎに来た地方出身者が不安を募らせている。生産と物流が滞った影響で工場や運送などの仕事が激減。習近平指導部は企業活動の再開を急ぐよう指示するが、北京の“出稼ぎ労働者の街”を訪ねると、苦境を訴える声が相次いで聞かれた。

 自動車部品などの製造業や物流センターが集まる北京市郊外の馬駒橋。中小の労働者派遣業者が軒を連ね、普段は仕事を探す人で活気づくが、人影はまばらだ。近くの駐車場には暇を持て余したトラック運転手が座り込んでいた。スマートフォンで運送依頼を受け、全国に荷物を届けるという甘粛省出身の男性(40)は「いつも春節(旧正月)連休後は忙しいのに今年は全く仕事がない」とぼやいた。

 新型肺炎の拡大で地方政府は外出や移動を制限。例年、春節を故郷で過ごした出稼ぎ労働者は3億人が都市部に戻るが、今年は2月中旬時点で8千万人にとどまった。習指導部の意向を受け、地方政府が出稼ぎ労働者の専用列車を用意するなど職場復帰を促す動きが広がるが、企業や工場の本格的な活動再開にはほど遠い状況だ。

 男性は「北京なら仕事があるかも」と甘粛省から30時間近くかけて馬駒橋に来たが、依頼はない。北京市政府は市外から戻った人に14日間の「自宅隔離」を求めるが、男性は妻とトラック内で寝泊まりしながら仕事を探し続ける。40万元(約630万円)で買った大型トラックはローンがまだ1年半分も残っている。2月の支払いは9日だったが、男性は「月末まで待ってもらうようローン会社に頼んだ。早く経済が元に戻ってほしい」と訴えた。

 大通りに面した労働者派遣業者は軒並み門を閉ざしていた。春節を北京で過ごした黒竜江省出身の男性(44)は通常、日給300元超の工場労働などに従事するが「今は求人がなく、あっても日給200元程度。ろくな仕事がない」。アルバイトのスーパーも休業し「このままだと収入が途絶えてしまう」と嘆いた。

 企業活動の停滞は北京中心部の出稼ぎ労働者にも影を落とす。スマホを使った料理の宅配サービス「外売(ワイマイ)」の男性配達員は、オフィスが集まる朝陽門周辺が担当区域。「春節前は毎日40件ほど注文があったのに、休業中の企業が多い今は1日10件あればいい方」という。感染防止のため顧客との接触を避けたり、消毒液を持ち歩いたり気苦労が絶えないが「収入が大幅に減るのは確実。やってられない」とため息を漏らした。

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