ハンセン病隔離法廷は違憲 熊本地裁「人格権を侵害」 菊池事件国賠判決

西日本新聞 社会面 綾部 庸介 鶴 善行

 ハンセン病患者とされた熊本県の男性が隔離施設の「特別法廷」で裁かれ、死刑となった「菊池事件」を巡り、検察が再審請求しないのは不当として元患者6人が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁は26日、同事件の特別法廷を違憲とする初の司法判断を示した。小野寺優子裁判長は、事件の審理は法の下の平等を保障した憲法14条などに違反すると認定。裁判公開の原則を定めた憲法37条にも違反する疑いがあると指摘した。法廷の設置手続きを裁判所法違反と認めるにとどめた2016年の最高裁報告書よりも踏み込んだ。原告側の賠償請求は棄却した。

 小野寺裁判長は、ハンセン病を理由にした一律的な特別法廷の運用に加え、被告以外の関係者が予防衣を着用、ゴム手袋をはめ、箸で証拠物を扱うなどした点も「当時のハンセン病に関する科学的知見に照らせば合理性を欠く差別だ」とし、憲法14条に違反すると判断。審理全体も「差別・偏見に基づき被告人の人格権を侵害した」として憲法13条違反も認定した。

 さらに、開廷場所の指定自体が国の強制隔離政策の一環で、少なくとも国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(熊本県合志市)内で行われた審理は「当時の社会状況に照らし一般国民の傍聴を拒否したに等しい」と指摘。全ての被告が公平で公開の裁判を受ける権利を定めた憲法37条や憲法82条に違反する疑いがあるとした。

 一方で、これらの憲法違反があっても「刑事裁判での事実認定に影響を及ぼす手続き違反とはいえない」として、ただちに再審請求の理由とはならないと判断。原告らは、裁判を受けた男性の親族ではなく、損害賠償を求める権利はないとして請求自体は退けた。

 訴訟は、男性の遺族が自身の家族への差別を恐れて再審請求に踏み切れなかったことから、男性と交流のあった元患者ら6人が2017年に提訴。国側は「最高裁報告書は特別法廷の違憲性を認めていない」などと主張していた。

 弁護団は「控訴については今後協議する」。熊本地検は「コメントできることはない」としている。 (綾部庸介)

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