ハンセン病隔離法廷は違憲 熊本地裁「人格権を侵害」 菊池事件国賠判決 (2ページ目)

西日本新聞 社会面 綾部 庸介 鶴 善行

■検察は再審請求し検証を

 【解説】ハンセン病を理由に設置された特別法廷を初めて違憲と認めた熊本地裁判決は、差別の歴史、実態を正面から見据え、司法の場で行われた人権侵害について自戒を込めて断罪した。個別事件の評価を避けて違憲性を言明しなかった2016年の最高裁調査報告書よりも大きく踏み込んだ。違憲状態の審理を経た「死刑判決」が果たして正しかったのか。検察は自ら再審請求し、検証するべきだ。

 判決は、当時の科学的知見に照らしても、特別法廷設置がハンセン病患者であることを理由に行われた「合理性を欠く差別だ」と認定。隔離政策が推進された社会状況にあって、隔離施設内で行われた審理は「一般傍聴を拒否したに等しい」と指摘した。

 最高裁の見解を乗り越えた熊本地裁の判断について、元裁判官の水野智幸法政大法科大学院教授(刑事法)は「法廷で原告の声を届けた弁護団の訴訟戦略が奏功したといえる。最高裁の判断にも忖度(そんたく)しない、裁判官のあるべき姿だ」と評価する。

 ハンセン病を理由とした特別法廷は1948~72年に95件あった。菊池事件以外の裁判でも憲法違反の審理が行われた可能性は極めて高い。

 2001年に熊本地裁が国の隔離政策を違憲と判断。19年には同地裁が患者の家族に対する偏見や差別も助長したと認め、いずれも国側が控訴せず確定した。一歩ずつでも権利回復が図られる中で、差別と偏見に満ちた法廷で裁かれた菊池事件はハンセン病史に残された最後の、最も重い宿題だった。元患者、家族への差別解消を本当の意味で実現するためにも、「違憲法廷」の放置は許されない。 (鶴善行)

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【ワードBOX】菊池事件

 1951年8月、熊本県菊池市の旧村役場の元職員男性宅にダイナマイトが投げ込まれ、52年7月にこの元職員が殺害された。警察は「ハンセン病患者だと県に通報した元職員を逆恨みした」として、患者とされた当時29歳の男性を殺人などの容疑で逮捕。裁判は国立ハンセン病療養所菊池恵楓園内などの「特別法廷」で行われた。男性は無実を訴えたが死刑が確定。3度の再審請求も退けられ、40歳だった62年9月に刑が執行された。特別法廷を巡っては最高裁が2016年、裁判所法違反だったと認める調査報告書を公表し、謝罪した。

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