違憲認定「実質勝った」 菊池事件判決 高齢の原告もどかしさも

西日本新聞 社会面 和田 剛 山下 真

 死刑が執行されて57年、司法によるハンセン病への差別を糾弾してきた元患者らに、かすかな希望が見えた。ハンセン病とされた男性が裁かれた「菊池事件」を巡る26日の熊本地裁判決は、賠償請求を退けたものの、最高裁が認めなかった「特別法廷」の違憲性を明確に認定した。高齢の原告らは再審への道が開けないもどかしさを抱えつつ、「男性の名誉回復へ一歩進んだ」と懸命に前を向いた。

 午後2時すぎ、熊本地裁前。判決直後、「特別法廷を断罪」と記された旗が弁護士によって掲げられた。集まった支援者らから拍手が起きた。

 「憲法違反と認め、次につながる判決だ」。原告の一人で、国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(熊本県合志市)の志村康入所者自治会長(87)は評価した。「男性の墓に『(再審への)とっかかりができました』と報告したい」

 弁護団共同代表の徳田靖之弁護士は「最高裁が憲法違反と言わなかったことを、明確に違反と言った。無謀な裁判と言われたが、実質的に勝ったと思っている」と言い切った。

 一方、判決は菊池事件の確定判決について、審理そのものの問題点には触れなかった。原告らの間には微妙な空気も漂う。

 療養所に入所した直後、13歳の時に男性の死刑執行を聞き、体が震えたという原告の竪山勲さん(71)は「本当は男性は無罪だと言ってほしかった。司法は責任を取っていない」と悔しさをあらわにした。

 原告の藤崎陸安さん(76)は「憲法に正面から向き合っていて、半分勝って半分負けた。再審請求の道が閉ざされたわけではない」と受け止めた。

 特別法廷の目撃者は減っている。特別法廷が恵楓園の自治会事務所や公会堂で行われ、広報や掲示がなかったことなどを訴訟で陳述した原告の杉野芳武さんは今年1月、判決を待たずに88歳で亡くなった。原告が願う再審実現に向け、残された時間は少なくなっている。

 原告の一人で全国ハンセン病療養所入所者協議会の森和男会長(79)は、全国の療養所入所者が約1200人に減少したことを指摘。「(男性の)家族の皆さんが再審請求できれば良かったが、大変な差別が残っていてできなかった。どれだけ命があるか分からないが最後まで再審への道を求めていく」と強調した。 (和田剛)

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