障害のあるわが子「親亡き後」暮らしていくには 福岡市でシンポ

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

 障害のある子どもを育てる親たちにとって、自分たちが老い、亡くなった後にわが子がどうやって地域で暮らしていくのか、という不安は大きい。こうした「親亡き後」の対応や支援について学ぶシンポジウムが15日、福岡市であった。障害者の生活には障害福祉サービスの事業所や地域とのつながりが不可欠となるため、日ごろから、さまざまな相談に応じる専門職との関わりが重要、との認識で一致した。 

 シンポは一般社団法人「障がい者の明日を考える会」(福岡市東区、荒牧功一会長)と西日本新聞社が共催。障害のあるわが子と自宅で同居する親たちを中心に、約60人が参加した。主に(1)お金(2)住む場所(3)身の回りを支える障害福祉サービス-について、パネリストが意見交換した。

▼財産「信託」の方法

 生活資金として、できるだけわが子に財産を残したい、と多くの親は願う。まとまったお金を適切に使ってもらうための仕組みや支え手も必要となる。

 司法書士の原田憲さんが財産を残す方法として紹介したのは、適切な時期に適切な金額が本人の手元に渡るようにする「信託」の仕組み。財産を、短期間で誰かに使われるような事態を避けることができる。

 親族など、信頼して財産を託せる人がいることが第一条件となるが「財産を、誰かに『点』で渡す遺言とは異なり、まず妻へ、亡くなれば障害のある本人に、残ればお世話になった施設に、など、子どもの将来を考えて親の代で特定できる利点もある」と述べた。

 原田さんは、財産を誰かが日々管理し、必要な分だけ本人に渡したり、施設利用料を払ったりする別の仕組みとして「成年後見制度」にも言及。もともとは意思疎通や判断が難しい人の権利を守る制度で、後見人には報酬も必要となる。

 「法定後見」では裁判所が後見人などを選任し、現在は全体の約7割が司法書士などの専門職。「本人の判断能力に問題がない場合は両親が元気なうちに、親族など後見人としてふさわしい人を見極め、契約することができる『任意後見』を勧めたい」と語った。

▼相談員と密な連携

 住まいや障害福祉サービスについては、相談支援事業所「サンクスシェア」(同市東区)の代表社員で相談支援専門員(相談員)の田中聡さんが解説した。

 候補として入所施設やグループホーム(GH)が挙がるものの、福岡市内の入所施設はほぼ空きがなく待機者が50人に上る所も。「GHも含め、空きがあっても、事業所によっては身体、知的など障害の種類ごとに得手不得手がある。一度入ってもなじめず自宅に帰る例もあり、その人に合った施設選びも課題となる」と指摘した。

 自宅で暮らし続ける場合は、ヘルパーや移動支援などのサービスが頼りになる。利用には原則、相談員が仲立ちする形でプランを立て、行政側に提出することが必要だが、現在利用中でも、相談支援事業所と契約していない人もいる。

 「相談員は、利用の手続きや専門職との橋渡しなど、家族だけでは大変なさまざまなことをしやすくする役目」と田中さん。「地域によっては十分役に立てていないケースもあるが、子どもの時から年を取るまで、一貫して伴走できるのも強み」と話し、日ごろから相談員と連携しておくことが大切だと強調した。

▼社協などと接点を

 長崎ウエスレヤン大(長崎県諫早市)専任講師の波名城(はなしろ)翔さんは、福祉事業所や病院、役所での勤務経験があり、精神障害がある人々の支援や研究に携わる。

 障害者の収入をめぐっては、比較的重い人に支給される障害基礎年金は月額6万5千~8万円程度▽福岡県の就労継続支援事業所の賃金(工賃)はA型が平均約6万9千円、B型が平均約1万4千円-と例示し、「生活に十分とは言えない」と問題提起。住まいでも「GHの建設に反対運動が起きることもある」と地域の理解不足を訴える。

 北海道や沖縄で、精神障害のある人たちが積極的に地域に出てGHをつくったり、ふれ合いの場をつくったりしているケースを挙げ、「社会福祉協議会やNPOなどにも相談しながら、親が元気なうちに社会参加していく道筋を模索してほしい」と呼び掛けた。

 主催した同会は、障害者の困り事相談を受け付け、こうした専門職への紹介も無料で行う。荒牧会長は複数の就労継続支援A型事業所も運営するなどしており「障害のある人が当たり前に暮らせるよう、行政任せでなく、民間の力も含めた仕組みづくりを考えていきたい」と力を込める。

 早いうちに相談窓口を見つけ、まず情報収集に着手する。そして地域と関わる糸口も見つけていくことが、「親亡き後」の不安を解消する一歩となりそうだ。

(編集委員・三宅大介)

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