弁護側は立証法に反発 元組合長射殺事件 【工藤会トップ裁判】

西日本新聞 社会面

〈マンスリー報告 2月〉「かん口令」証言が出ず

 特定危険指定暴力団工藤会トップで総裁の野村悟被告(73)とナンバー2の会長田上不美夫被告(63)の公判は12日、審理される4事件のうち唯一の殺人事件、元漁協組合長射殺事件(1998年)の証人尋問を終えた。検察側は、組織のために事件を起こした“功労者”への現金積み立ての実態を明らかにしようとした。ただ、検察側の主張と食い違う証言もあった。最大の焦点である両被告の指示を示す証拠は出なかった。

功労者への“厚遇”

 ≪組員から集まる多額の上納金。その一部は「組織のために罪を犯した組員」のために積み立てられていたという。対象者の名簿には、射殺事件の実行犯も名を連ねていた≫

 元組員 2007年末から4年間、会の事務局員として上納金の集計などを担当した。毎月2千万円ほど集まり、(1)野村被告宅の維持費(2)「貯金」(3)会の運営費-に分けていた。

 貯金とは、会の総務委員長から渡された名簿に載っている組員のため、毎月10万~20万円を積み立てること。対象は、組織のために事件を起こす「ジギリ」で服役している組員。射殺事件の実行犯と見届け役の2人にも毎月20万円ずつ積み立てていた。

 弁護側 貯金の対象者が「ジギリ」で服役していると、会合などで正式な説明があったか。

 元組員 ない。

「親分のためやけ」

 ≪トップらの指示を直接示す証拠がない一方、野村被告の関与をうかがわせる証言もあった。会の組織性をあぶり出そうとする検察側に対し、弁護側はその立証方法に反発した≫

 元組長 事件の約1~2カ月前、組幹部と実行犯の2人が組事務所の会議室から出てくる場面を見た。組幹部は実行犯に「親分(野村被告)のためやけの」と伝え、実行犯の顔はこわばっていた。

 弁護側 実行犯らのやりとりを聞いただけであり、伝聞でしかない。

 元組長 1987年~88年に北九州市内のホテルなどで劇物が散布された事件に関与したが、いずれも野村被告の指示だった。

 弁護側 起訴されていない事件による立証は許されない。散布事件の時代の話は本件の指揮命令とは関連性もない。

食い違う説明

 ≪射殺事件後の98年3月、両被告が当時、所属していた組の定例会が開かれた。検察側は、田上被告がその場で事件について「かん口令」を敷いたと主張するが-≫

 元組員 毎月の定例会では、うわさ話や他人の悪口を言うなと呼び掛けられていた。事件後、初めて開かれた定例会でも田上被告が同じ趣旨の話をしたが、個別の事件に関して言った感じではなかった。

 弁護側 田上被告が、射殺事件についてうわさ話や臆測を話してはいけないと言ったのか。

 元組員 そういう話ではない。毎月の定例会で話している注意や指導。

 検察側 2014年9月の検察官調書では、田上被告が定例会で「射殺事件については警察にはもちろん、組員の間でも一切話すな」と言ったと説明している。

 元組員 調書にあるのなら言ったかもしれないが、そういう感じではなかったと思っている。

検察側主張に反論

 ≪弁護側の初めての証人として、実行犯らの担当弁護士が出廷。検察側が描く構図の一部に疑問を投げかけた≫

 弁護士(1) 実行犯と見届け役の上告審から弁護人を務めた。見届け役の関与を示す知人の供述は虚偽だと立証しようとしたが、08年に上告は棄却された。見届け役は「(知人は)なぜうそをつくのか」と話した。

 弁護士(2) 実行犯らの弁護を一審から担当。06年に(実行犯が事件当日に立ち寄った)喫茶店の店主と弁護士事務所で会った。犯行時刻に実行犯は店にいたことを確認するためだ。

 弁護側 (検察側作成の)店主の供述調書によると、弁護士(2)が実行犯の証拠を隠滅した内容の書面を店主に見せ、署名を求めたとある。

 弁護士(2) いいえ。調書を見て、正直びっくりしたし、恐ろしくなった。

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【ワードBOX】元漁協組合長射殺事件

 1998年2月18日夜、北九州市小倉北区の路上で、同市若松区の元脇之浦漁協組合長=当時(70)=が頭や胸を撃たれ死亡した。福岡県警は2002年、殺人容疑などで田上不美夫被告ら4人を逮捕、田上被告のみ不起訴となった。裁判では実行犯ら組幹部2人の実刑判決と、組幹部1人の無罪が確定。県警は14年9月、事件に関与した疑いが強まったとして、同容疑で野村悟被告と田上被告を逮捕した。

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