農業復興、土地諦めてでも 公営住宅避難38戸 佐賀大雨半年

西日本新聞 社会面 北島 剛 河野 潤一郎

 九州北部を襲った記録的大雨から28日で半年。甚大な被害が出た佐賀県では、被災住宅の応急修理が約7割で完了した。一方で、浸水被害に遭った自宅に戻れない被災者が公営住宅38戸で避難生活を続けている。

 県によると、被災住宅の応急修理は670世帯の申し込みに対し、21日時点で506世帯が完了。災害廃棄物の処理は佐賀市、武雄市、小城市で続いており、佐賀市の一部地域を除き、3月までに終わる見通し。

 大町町の鉄工所から流出した油によって被害を受けた農地では石灰散布が行われており、油の濃度が高かった4カ所については5月下旬までに土壌の入れ替えを行う予定になっている。 (北島剛)

 昨年8月の記録的大雨の際、油を流出させた佐賀県大町町の鉄工所工場近くでキュウリを栽培していた農家鵜池(うのいけ)幸治さん(34)は、代々受け継いできた土地を諦め、2021年度をめどに町内に整備される農業団地での営農再開を目指している。「作りたくても作れない苦しさを感じてきた。だからこそ、キュウリに懸けて産地を引っ張っていきたい」。被災で農業を失った人々の思いも胸に、新たな未来を切り開く覚悟だ。

 実家近くの田畑で農業を始めて15年近く。父親の隆幸さん(70)とキュウリ栽培の技術や収量を競うように腕を磨いてきた。減農薬の安全性と味が消費者に好評だった。3棟の最新型ハウスを建て借金を返済したばかり。そこに未明からの大雨で黒い油が浮いた水が流入し、数日間滞留した。

 水が引いて中に入ると、油の臭いが鼻を突いた。収穫期だったキュウリは黒っぽくなり、全て廃棄した。土には油が染み込んだ。「安全・安心と心から言えなくなる。もうここでの農業は考えられない」。昨年12月にハウスを全て解体、祖父の代からの農地を去る決断をした。

 50年以上、この土地を耕す隆幸さんも営農を断念するしかなかった。「体が動く限り続ける」との思いを持っていたが、油が付着して使えなくなった農機具の購入費が重荷になった。

 親子にとって重い決断だったが、鵜池さんはキュウリ栽培にこだわり続ける。昨年末から佐賀市の農業施設で働き、ベテラン農家から最新の栽培技術を学ぶ。施肥や水やりのタイミングなどを教わりながら「自分がやってきた栽培方法は間違っていなかった」と手応えも感じている。

 再出発の地となる農業団地は、油被害がなかった町内の農地約1・3ヘクタールに町が整備するもので、最先端のハウス数棟を備える。鵜池さんは妻陽子さん(34)に加え、隆幸さんら両親にも手伝ってもらうつもりだ。

 鵜池さんは被災前の風景と変わりない営農を心待ちにする。「農業を始めた頃は地域の人たちに助けてもらった。人とのつながりを大事にして若手農家に技術を教えることで恩返ししたい。決断が間違っていなかったと思えるよう頑張りたい」 (河野潤一郎)

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