肺炎拡大阻止へ韓国“強権” MERS流行を教訓

西日本新聞 総合面 池田 郷

 【ソウル池田郷】新型コロナウイルスの感染が急速に拡大している韓国では、日本をはるかに上回る1日1万件のペースでウイルス検査が実施されている。2015年に中東呼吸器症候群(MERS)の流行で死者を出した韓国は検査態勢を強化。今回の感染拡大後はクレジットカードの利用履歴などで感染者の行動を分析し、判明した移動経路を地図上に表示するスマートフォンのアプリが導入されるなど官民挙げて封じ込めの徹底を図っている。

 韓国の保健当局によると、コロナウイルス検査数は1日7千~1万件。発生当初から27日までに約5万6千人を検査した。感染者数の急増について、当局は「他国より検査件数が多い」ことを理由に挙げる。

 韓国では15年のMERSの流行で38人が死亡。その苦い経験を基に翌16年、民間部門でも検査ができる態勢を整えた。現在、全国の検査機関は約570カ所。保健所や検査会社のほか、約110カ所は政府指定の民間病院だ。病院の場合、採取した検体を同じ施設内で検査するため、検体搬送に時間がかからず、素早い対応が可能だ。

 韓国の国会は26日、改正感染症予防法を成立させた。感染症の疑いがある人が隔離措置に従わない場合は1年以下の懲役か1千万ウォン(約90万円)以下の罰金を科す。感染国からの外国人入国も禁止できるなど“強権的”とも言える内容だ。

 一方、保健当局は感染者のクレジットカードや公共交通機関の利用履歴、屋内外の防犯カメラ映像などから、感染者の行動歴を詳細に分析し公開。民間では公開情報を利用したスマホの専用アプリが続々と開発されている。地図上に感染者一人一人の移動経路が表示され、立ち寄り先に利用者が近づくと警告音が鳴るなどの仕組みだ。

 南東部大邱市の宗教団体の信者であることを隠していた感染者が、今回の感染拡大の契機となった集団礼拝に参加していたこともスマホの位置情報から突き止めた。

 さらに韓国政府は中国からの入国者には専用のアプリをダウンロードさせ、健康状態を逐次報告するよう要請。2日間、報告がなければ当局者が連絡して所在などを確認している。

 文在寅(ムンジェイン)政権が矢継ぎ早に対策を打ち出す背景には、今年4月に国会の総選挙を控え、MERSが流行した当時の朴槿恵(パククネ)政権の対応が後手に回ったとして批判が高まり、支持率が急落したことがある。

 だが一部施策には疑問の声も上がる。保健当局は感染者に2メートル以内で接触した人に2週間、自宅での隔離を勧告。該当世帯には4人家族基準で123万ウォンを支給することを決めた。野党からは「ばらまき」との批判も出ている。

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