10年かけ徒歩で列島一周 8600キロを踏破した75歳が見たニッポンとは

西日本新聞 ふくおか都市圏版 上野 洋光

過疎と田畑荒廃に危機感

 全国の沿岸を歩いてみて分かったのは、地方の山林や田畑の荒廃ぶりだった-。約10年かけて徒歩で日本一周を果たした福岡県春日市の農業白水繁則さん(75)の実感だ。夢をかなえ、「冥土の土産になる」と喜ぶ一方で、代々続く農家として「日本は農業を大切にしてきた国なのに…。このままでは国が滅んでしまう」と今も危機感を募らせている。

 白水さんはJA筑紫を53歳で早期退職。健康増進のため、当時78キロあった体重を減らそうと、近くの公園で散歩を重ね、65歳の時、「日本一周徒歩の旅」を思い立った。

 初日は2009年1月16日。自宅から県庁まで約13キロを歩いた。

 実は白水さんは犯罪や非行に陥った人の更生を手助けする保護司。農家の仕事もあり、長期間、自宅を離れられない。このため、白水さんの旅は、目的地に到着すると公共交通機関で自宅まで戻り、次は自宅から前回のゴール地点にバスなどで出掛け、歩き始めるスタイル。

 県庁から糸島市や佐賀県伊万里市、長崎市などを通過し、反時計回りに自宅と旅先を16往復しながら、1年9カ月かけて、九州を一周した。名所や地元の名物には目もくれず、ただただ歩き続けた。

 次は四国。歩いて渡れる「しまなみ海道」は今も最も印象に残る旅先の一つだ。その後、山口県下関市から日本海を北上し、津軽海峡を渡り、5年目に北海道に到着。クマに遭遇はしなかったが、宿泊地が見つからず、1日60キロ歩く羽目になってしまったことも。

 次は青森から太平洋沿岸を南下する予定だったが、東日本大震災で立ち入りが禁じられた地域もあり、内陸を通って仙台市へ。東京、大阪を経て、9年10カ月かけて2017年秋に下関市に到着。リュックを背負って約8600キロを計287日で歩き通し、日本一周を果たした。

 旅を終えて今、感じているのは東京、大阪など都心部と地方の人口格差。「都会は若者も多かったが、地方では若い人たちをほとんど見掛けなかった」と白水さん。田畑も山林も荒れ放題で、空き家の多さが目についた。「九州も全国の田舎も同じ。田舎が粗末に扱われ、農林業を大切にしないようでは文化も廃り、国は駄目になってしまう」と嘆く。

 30年余り務めた保護司は3月で退職を迎える。旅の影響で農業に一層愛着が生まれた。那珂川市に所有する田んぼの管理を続けながら、今後は「日本百名山」に挑む予定だ。「全て登れなくても、数十くらいは達成したい」 

(上野洋光)

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