【提言委員座談会】転換期を生きる道は 10年先の九州見据えて

西日本新聞 オピニオン面

 本紙の大型コラム「提論」を執筆する提言委員は、「2030年九州のために 次世代に何をつなぐか」をテーマに、令和時代に入って最初の座談会を都内で行った。国内外ともに不確実性が高まり、視界不良状態が続くが、こういう局面こそ、中長期的・大局的な視野を持った座標軸を求めたい。「10年後」を照準に、持続可能な地域の姿をどう描き、目的を共有して取り組んだらいいか。次世代社会に多様な選択肢を渡すことができるか。人口減、少子化、超高齢化、一極集中の加速という構造変化と、グローバル化、情報通信技術などの飛躍的な進展が同時に進む歴史的な転換期での、九州の「生きる道」を探った。(敬称略)

【地域力復元】コミュニティーを源泉に

 -10年後の九州を展望する時、地域力の劣化をどう復元するかが重要になる。見解を聞かせてほしい。

 徳増浩司(前ラグビーW杯2019組織委事務総長特別補佐) 昨年のラグビーW杯で実感したのは、試合会場やキャンプ地で、それぞれの地域の人たちが情熱を持って独自の活動に取り組み、スポーツの力が発揮されたことだ。多くの人が同じ目的に向かって気持ちをひとつにする素晴らしさ、勝利至上主義と異なり純粋にスポーツを楽しむ文化、外国人との交流・共生。九州でも各地で高揚感あふれるレガシーが生まれた。あの成功経験は、これからの地域力の向上につながると思う。

 関根千佳さん(ユーディット会長、同志社大客員教授) 私もにわかラグビーファンになった。「人々の意識を高揚させる何か」って大事なキーワードだと思う。そういう意味で言えば、地域の文化を見直すことを進めたい。地域の文化や歴史の磨き直しだ。京都に住んで思ったのは、老舗というのは変革できる能力のある店ということ。続けていくために自分たちを変えていく力を持っている。立ち位置を理解して、強みを発信していく。そのためには、新聞社の役割も大きい。

 平野啓一郎(作家) ラグビーW杯は素晴らしかった。「一丸」というよりも、多様な個々人が自由にやることが、いい結果につながる、という仕組みづくりが重要だと思う。また、新しい価値をどう創造していくかという視点を持ちたい。インバウンドが取り上げられるが、もとからある物を評価してもらうやり方で、新しい物を生み出してはいない。地域の文化、伝統技術や伝統工芸も、再評価だけでなく、生活の中でどう使うのか、みんなが求めているニーズに応えているか、その土地の何と対応できるかを考えるのが大事だ。

 松田美幸(福岡県福津市副市長) 地域力という意味では、コミュニティーの存在が大きい。福津市で見ていると、もともと社会資本関係が豊かなところは、新住民にも居場所がみつかる。消防団とか、祭りとか。そこで子どもたちが育てられ、人口増につながっている。相互支援を自分たちでやっている地域と、行政サービスに依存する地域では相当な差ができる。働き盛りがもっと地域に関われるようにする働き方改革も必要だ。コミュニティーに関われる時間をつくれるところが、豊かな暮らしを実現できるようになっていく。

 国連の子どもの権利条約で大事なポイントは、参加権と意見表明権。子どもの頃からの社会参加を担保すべきだが、日本では大事にされていない。

 姜尚中(熊本県立劇場館長) 地域力を考える上で、家族の問題を提起したい。解体というか変容が起きている。そのことが地域社会のあり方を大きく変えている。これからどうなっていくのかについては、メディアも深めてほしい。こうした社会に落とされた影へ対応するために、公的施設の役割が大きいと思う。地域社会における公的スペースの充実を図りたい。

 宮本雄二(宮本アジア研究所代表、元中国大使) 向こう10年で九州が何を目指すのかの全体目標を掲げるのが大事だ。私は「人同士の絆、人と社会の絆を一層深め、安心・安全を追求することのできる生活と社会の実現」だと思う。最近、科学優先の考え方が強まってきて、人類が漂っているのでは、と考え込まされている。一方で、「人間は他の人間がいないと生きていけない」という言葉がふに落ちる。コミュニティーの出発点だ。

 都市化が進み、自然災害が多発する現代社会だけに、コミュニティーの大切さを痛感している。これがなければ生きていけない。どうしたら立て直せるかが、地域再生の根幹ではないか。行政のスリム化にもつながる。新しい時代のコミュニティーづくりを九州から取り組んでほしい。

 

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