学力検査はできたのに… 通知表の疑問「内申書」にも

西日本新聞 くらし面 金沢 皓介 前田 英男

「学校の本質を外れている」

 中学生や保護者が通知表の成績に気をもむ理由は、高校入試に直結する「調査書(内申書)」が背景にある。とりわけ各教科の評定を示す内申点は合否を左右するといわれる。その仕組みは、高校側が義務教育の成果を確認できる一方で、子どもたちの自由な学びと進路を狭める可能性も指摘される。内申点重視の傾向が変わることはないのだろうか。

 授業中は私語をすることなく積極的に挙手し、定期テストはクラス上位。部活動でリーダーも務めた。でも、志望する公立高校の推薦枠を決める中学校での選考に漏れた。推薦基準とされるボーダーラインぎりぎりの内申点。一般受験した学力検査に自信はあったが結果は不合格だった。

 「内申点が大きかったのかなと思う。だけど何が足りなかったのか、今もよく分からない」。福岡県の私立高校1年の女子生徒(16)は納得できないでいる。

 福岡県の県立高校一般入試の選抜方法は、内申点と学力検査の結果を序列化。高校が定めた基準内を「A群」、それ以外を「B群」とし、最終的には調査書の「評定の数値以外の記載事項を重視」するなどして合格者を決める。

 「福岡県では各高校の基準とする内申点が足りなければまず受からない」と、九州の複数の県で指導経験のある男性塾講師。塾では生徒の定期テスト対策を重視し提出物の事前チェックもしているという。「中学校にこびるような形で学習の本質から外れている。普通科の高校なら学力検査だけで評価した方が良いのではないか」と訴える。

内申点の算出・活用に違い

 内申点の算出方法や入試での使い方は、地域や学校によってさまざまだ。

 九州各県の本年度公立高校の一般入試で、福岡は中学3年のみの評定を採用し、9教科の5段階評価を加えた45点。熊本は1~3年分で3年時の評定を2倍にした180点満点だった。

 学力検査のない技能教科(実技4教科)に重きを置いているのが大分、鹿児島。大分は1、2年の技能教科の評定を2倍、3年は4倍に。3年のみの成績となる鹿児島は、国語などの5教科を10点満点に換算するのに対して、技能教科は各100点満点とした。

 気になるのはその活用。各県の入試要項には「総合的に判定」(宮崎)「学力検査の成績との相関」(鹿児島)など抽象的な表現が目立ち基準は見えにくいが全ての受験生に面接を課す佐賀は、選考の種類により学力検査の評価割合を「50~70%」「70%程度」と明記。大分は高校別に公表しており、内申点と学力検査を「3対7」とする学校が大半を占めるなど、学力重視もじわりと広がる。

評価基準分かりやすく

 一方、各県では少子化の波を受けて公立高校の入試改革が進む。その一つが福岡や熊本などで実施される特色選抜方式だ。定員の一定割合の範囲で学力検査を課さず面接や作文、実技試験などで合否を決める。

 長崎県は2021年度入試から学校推薦制度を廃止することにした。県教育委員会によると、約8割の高校で推薦入試が定員割れになるなど課題が指摘されていたという。今後は前期と後期の2回に分け前期を「特色選抜」「文化・スポーツ特別選抜」とする。

 これに伴い「学力検査と同等」の扱いだった調査書も、各学校が比重を定める形に変わる。長崎県の男性塾講師は「内申点を重視するタイプの入試と、学力を重視するタイプの入試と大きく分かれていくのではないか」とみる。

 とはいえ、現状の公立高校入試で内申点の縛りが解けることはない。受験生の懸念材料に内申点の学校間格差もある。京都大名誉教授で仏教大の田中耕治教授(教育方法学)によると、福岡県は中学校の指導要録が目標に準拠した評価(絶対評価)に転換した際、全国で唯一、内申書にほかの生徒と比較する「相対評価」を併記していたという。

 「現行の目標準拠の評価を保護者や児童生徒にきちんと理解してもらえるよう、評価のあり方にメスを入れる必要がある。学校や教師間で調整し、平準化する努力が求められる」と田中教授。入試改革と評価の改善は一体的な取り組みが求められている。(金沢皓介、編集委員・前田英男)

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※次回は現状の通知表について、現役の中高生らの受け止めをリポートします。

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