【熊本県政検証・ハンセン病問題】啓発施設、6年放置し幻に

西日本新聞 熊本版 和田 剛

 熊本県はかつて、ハンセン病患者の療養所開設や、患者を強制収容する「無らい県運動」に加担してきた。県の検証委員会は2014年、人権侵害を反省し、啓発推進と「県立ハンセン病センター(仮称)」の整備を求める報告書をまとめた。あれから6年。県は啓発活動の改善に取り組む一方、センター建設には消極的だ。

 「県のハンセン病への取り組みを検証し、政策の充実を図ってきたことで、県民の理解を深める機会は着実に広がった」

 蒲島郁夫知事は1月末、県のハンセン病問題啓発推進委員会の最終報告書を受け取り、胸を張った。

 最終報告書は26ページ。過去5年間の議論に基づき県の啓発の課題と改善策をまとめた。委員で国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(合志市)の志村康入所者自治会長(87)も「他県にない真摯(しんし)な報告書」と評価する。

 検証の動きは蒲島県政1期目までさかのぼる。蒲島知事は就任3カ月後の08年7月、初めて恵楓園を訪れ入所者の求めに応える形で検証を約束。14年にまとめられた無らい県運動検証報告書は356ページに及び、国が患者発見のため隣人の密告を奨励したことや県の保健所も強制的に「ドシドシ収容した」ことなど、負の歴史に正面から目を向けた。

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 ただ、県の関与は無らい県運動だけではない。

 昨年11月、恵楓園の110周年記念式典で配られた「九州療養所30年史」。園の前身である療養所の運営にも、県の深い関わりをうかがわせる記述がある。

 九州療養所は1909年に九州7県が合同で設立。30年史によると、熊本県庁で25~38年にほぼ毎年、療養所予算協議会が開かれ、各県の警察部長に加えて、熊本県知事もたびたび出席したという。恵楓園は41年に国の管理下に移り、県が関与する場面は減った。

 近年、県のハンセン病関連予算は年400万円程度。恵楓園での見学会開催や啓発冊子の配布などが中心だ。新年度予算では1100万円を計上し、ハンセン病元患者と家族の相談窓口を熊本市内に4月から新設する。ただ、運営は民間団体に委託。県の主体性には疑問が残る。

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 県内では21世紀に入ってからも、隔離政策の違憲性を指摘した熊本地裁判決(2001年)▽恵楓園入所者の宿泊拒否事件(03年)▽家族の差別被害を認めた熊本地裁判決(19年)▽菊池事件特別法廷を違憲とした熊本地裁判決(2月26日)-と、歴史的な出来事が続いてきた。ハンセン病は、過去の問題ではない。

 14年の無らい県運動検証報告書が求めたハンセン病センターの整備は、隔離政策などの資料収集や教育研究を行う機関を想定。しかし、県は「費用がかかり厳しい。啓発行事などソフト面を充実させる」として、恵楓園内の歴史資料館(社会交流会館)に啓発機能を一本化する考えだ。

 同館は22年までの全面改装を予定している。恵楓園では毎月1回、改装方針を話し合う会議が開かれてきたが、県は「改装について、国や恵楓園と意見交換をしたことがない」という。

 入所者自治会の太田明副会長(76)は「3年かけて園や厚生労働省、展示業者と部屋の構造や展示内容を議論し、良いものがまとまった」と語る。

 県の動きが鈍い間に、計画は固まりつつある。県の意向が反映される余地は、あまり残されていない。(和田剛)

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検証委が啓発施設開設を提案

 ハンセン病患者を強制隔離した「無らい県運動」を調査する検証委員会(委員長・内田博文九州大名誉教授)は24日、合志市の国立ハンセン病療養所菊池恵楓園で最終会合を開き、13人の委員が執筆した330ページに及ぶ調査報告書の素案を了承した。(中略)ハンセン病への理解を深めるために「県立ハンセン病センター」を、恵楓園内に開設するよう求める意見も盛り込まれている。(2014年3月25日付の本紙熊本県版より)

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