【九州の国際化に照準】 出口治明さん

西日本新聞 オピニオン面

◆民や官との協働を推進

 立命館アジア太平洋大学(APU)は、今年開学20周年を迎える。タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)という英国の教育専門誌による世界大学ランキング(日本版)では、2年連続して西日本の私大ナンバーワン、全国私大5位、九州の大学では九大に次ぐ2位という評価をいただいた。

 4代目学長に就任して2年が過ぎたが、さらなる発展を遂げるには、地元九州が元気になることが欠かせないと考えている。九州が沈滞して、九州に存在するAPUが活性化することなどあり得るはずがない。だから、APUの使命は、「民・官・学のコラボレーション(協働)」を推進して、九州に貢献することだ。そう考えて昨年、九州経済連合会と全面的な連携協定の締結を行った。

 APUの強みは学生の半数を占める国際学生の存在にある。92カ国・地域から集まった約3千人の若者が、大分県別府市の山上キャンパスで生活しているが、ここはまさに「若者の国連」であり、「小さな地球」そのものだ。この多様性(ダイバーシティ)にあふれたグローカルな集団と、九州の企業を結びつけて、新しい商品・サービスの開発に挑戦したい。例えば、ムスリムの学生を含む7カ国・地域の学生らが地元の醤油(しょうゆ)メーカーと共同して、ハラール認証の醤油を開発し、販売につなげた実績がある。

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 イノベーション(技術革新)を生み出す母体は、ダイバーシティであるという経験則がある。九州の企業にはAPUを使い倒してほしい。九州企業の社員の皆さんに、APUに逆インターンとして来ていただくという方法もある。合宿型のリカレント(社会人の学び直し)教育、社員研修をAPUでやっていただくことだ。これについても既に実績を積んでいる。

 官とのコラボレーションも、全く同様の考えに基づいている。既に地元・大分県の全市町村とさまざまな連携協定を結んでいるが、昨年は佐賀県の有田町と友好交流協定を締結した。人間国宝を有して日本文化を体現する有田焼の伝統をAPUの学生が学び、かつグローバルな感性をいかして国際展開に何か貢献したい、というアイデアが実を結んだものである。

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 民・官・学のコラボレーションを成功させる鍵は、ウィンウィンの関係を構築できるかどうかだと考えている。双方にメリットがない関係は長続きしない。

 これまで、さまざまなコラボレーションに触れてきたが、APU単独でも、九州の活性化に貢献できると思っている。そのための最大のチャレンジが「起業」だ。つまり、ベンチャーやNPOを、APUから輩出することだ。2018年7月に、APUは起業部(通称・出口塾)を発足させた。発足後1年で、4社が起業した。

 現在は、2期生が起業に向けて日夜努力を続けているが、わが国は外国人の起業に対して、制度的なハードルが高い。例えば、外国人は起業に際して500万円の資本金を用意するなどの条件をクリアしなければ、経営管理ビザが下りない。

 外国から日本に勉強に来て、日本が好きになって起業しようという外国人学生に対しては、500万円をプレゼントして「頑張ってください」と激励するくらいの人情があっていいのではないか。そう思って、首相官邸での会議で安倍首相に直訴したところ、検討してくださるということになり、期待している。

 国際化に関しては、開学20周年を記念しインバウンドに資する観光系学部の新設を検討している。これからも九州とともに歩んでいきたい。

 【略歴】1948年、三重県生まれ。72年、京大法学部卒、日本生命入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任。2008年、ライフネット生命を開業。12年上場。社長、会長を歴任。18年から現職。著書に「哲学と宗教全史」など。

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