祖父の重さが教えてくれた【坊さんのナムい話・7】

西日本新聞 くらし面

 結婚式で両親へのプレゼントとして、新郎新婦の出生体重と同じ重さのぬいぐるみを贈ることがあります。自分たちの成長を肌で感じてもらう、あの感動的な、泣けるやつです。

 さて最近、葬儀で不思議に思うことがあります。それは「なぜ男性しかひつぎを担がないのか」ということ。私の暮らす地域だけなのかもしれませんが、必ず「男性の方に」という呼び掛けがあるのです。「男性の方が力持ち」という理由であれば、高齢で足元のおぼつかない男性よりも、若年の女性の方が体力があるように見えます。

 私の祖父はがんで亡くなりました。高齢ということもあり、本人や家族と話し合って積極的な治療はしないと決め、病状が進むと緩和ケアの病棟へ入院しました。その間、一度だけ祖父を背負ったことがあります。一時帰宅した祖父を、自宅2階に運ぶためです。祖父は大正生まれにしては体格の大きな人で、果たして持ち上げられるのか、不安でした。しゃがんで、背中に祖父を乗せたまま立ち上がろうとすると、ひょいと持ち上がり、すんなりおんぶができました。

 「軽い…」。そこから階段を一段ずつ上るのですが、あまりにも簡単に上れるものですから、逆にその軽い足取りを切なく感じたのを覚えています。いつも見上げていた大きな祖父が、こんなにも小さくなってしまった。背中に当たる祖父の胸の骨や細くなった太ももから、病気の進行が肌に伝わります。「ああ、じいちゃんは死ぬんだなあ」。そう実感した瞬間でした。

 人はさまざまなものから、生や死を感じ取ります。重さもその一つではないでしょうか。初めて自分の子を抱いたとき、その軽さに命の弱さを感じ「自分が守らなければ」と決意する。それと同じように、亡くなっていく人の重さを知ることも、その死を受け入れるために大事なんだと思います。

 だから私は、女性にも子どもたちにも、大切な人のひつぎを担いでほしいのです。そこから学ぶことがきっとあって、それは亡くなった人からの、最後のプレゼントかもしれません。  (永明寺住職・松崎智海 北九州市)

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