クルーズ船感染 政府は課題検証し対策を

西日本新聞 オピニオン面

 大型客船という閉鎖空間で新型の感染症が発生した場合、国や船会社はどう対応するべきなのか。大きな課題が日本だけでなく、国際社会に突き付けられたと考えたい。

 新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から全ての乗客乗員が下船した。約3700人のうち約700人に感染が広がった。対応に当たった厚生労働省の職員や検疫官まで感染した。何よりも外国人を含む7人(2日正午現在)が亡くなっている事実は重い。

 乗客の多くを長く船内に留め置いた日本の対応には国際社会から批判もある。船内隔離以外の選択肢はなかった-と政府関係者は語るが、感染率が2割に迫る現実を直視すれば、防疫が後手に回り、集団感染を招いたと指摘されても仕方あるまい。

 クルーズ船受け入れは、国策である観光立国の柱の一つだ。博多港や長崎港でも今後、同様の事態が起こる可能性はゼロではない。政府は一連の対応の問題点や課題を検証し、必要な対策を直ちに実施すべきだ。

 ダイヤモンド・プリンセスは1月20日に横浜港を出港した。香港で下りた男性の感染が分かり、政府は2月3日に帰港した船を停泊させて検疫を始め、集団感染判明後の5日以降は乗客に個室待機を要請した。

 厚労省は乗員への衛生指導など適切な対策を行ったと説明するが、個室待機の開始後も、デッキで歩行運動する際に乗客同士が間近に接していたとの証言がある。乗員が運ぶ食事のトレーなどを介して接触感染が広がったと推測する識者もいる。

 今回の船内隔離は、事前準備と感染防止に配慮した現場の管理が十分だったのか。実態を明らかにする調査を政府に求めたい。その上で、有効な対策を練り上げることが肝要だ。持病のある高齢者などを速やかに船外施設に移すには、寄港地の自治体との事前協議も欠かせまい。

 感染拡大防止の第一歩は感染の有無の確認だが、現在のウイルス検査は精度に課題がある。実際、船内での検査で陰性だった人が下船後に発症する例が相次いでいる。人権侵害になりかねない行動制限には慎重であるべきだが、下船後の経過観察は今後の大きな検討課題だ。

 国際法では公海上の船の管轄権は船籍国にある。今回のクルーズ船は英国籍で、米国の会社が運航した。横浜帰港まで日本に感染症対策をする権利も義務もなかった。そうした事情も対応が遅れた背景にあろう。大型化が進むクルーズ船の感染症対策にどう取り組むのか。国際社会にルール作りを呼び掛けることも日本政府の役割だろう。

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