太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ…

西日本新聞 オピニオン面

 太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。三好達治の「雪」。音もなく降り積もる雪の中で、冬ごもりする北国の情景が浮かぶ

▼九州は桜便りも遠からじの暖かさだが、北国はまだ雪の中。南北に長い日本列島の多様さを思う。その列島が一様に、自粛という名の「冬ごもり」

▼音もなく忍び寄るウイルスは、興行を眠らせ、催しを眠らせ、学校までも眠らせて、暮らしにふりつむ。全国の太郎よ、次郎よ、花子よ。家に閉じ込められてつらいだろうが、しばし辛抱しておくれ。君たちの安全のために

▼若い人は感染しても軽症や無症状が多いとか。そんな君たちが人の集まる場所に行けば、ウイルスの運び手になりかねない。遊びに出たいだろうが、しばし辛抱しておくれ。病魔を広めないために

▼ネットの冬空からデマもふりつみ、心をかじかませる。「マスク増産で紙製品が不足する」との虚言にあおられ、店頭からトイレットペーパーやティッシュペーパーが消えた。業界は「在庫は十分」と言っているのに。一斉休校に備え、米や缶詰などの保存食品が売り切れる店もあるという

▼空っぽの棚を見れば、デマと知っていても買いに走りたくなる。行列があればとりあえず並ぼう、とも。気持ちはよく分かるけれど、ひどい災害の時にも他者を気遣える国民である。過度の不安や焦りは眠らせ、雪解けを待ちたい。

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