中村哲さんの「志」世界へ 人道支援活動30人が英訳

西日本新聞 社会面 中野 慧

 アフガニスタンで医療や用水路建設事業に取り組んだ中村哲医師が凶弾に倒れ、4日で3カ月。故人の言葉を世界に広く伝えようと、寄稿文の英訳作業が進んでいる。呼び掛けたのは、世界各地で人道支援活動に携わる有志たち。支援の現場では欧米の価値観が前面に出ることも少なくない中、「現地の文化や風習に敬意を持って活動した中村先生の考えを多くの人々に知ってほしい」と願う。

 メンバーは、紛争地帯で活動してきた元国連機関職員、仲佐かおいさん(34)をはじめ、国連機関や非政府組織(NGO)の職員、医師として発展途上国の支援に関わる日本人が中心。カナダ人や英国人も含む。

 訃報から1週間後。アフリカ各国で約9年間、国際開発の仕事を経験し、現在は英国の大学院に在籍する品川夏乃さん(32)がインターネット上で読んだ中村さんの寄稿文が有志を引き寄せた。支援の現場で働く各国の人にも届けたいと思い、友人の仲佐さんと一緒に呼び掛けたところ、中村さんと面識はないものの、長年の活動に共感する30人以上が賛同した。

 英訳しているのは、2009年から亡くなる直前の19年12月まで計27回、中村さんが西日本新聞に寄稿した連載記事「アフガンの地で 中村哲医師からの報告」。メールで連絡を取りながら手分けして英訳し、英語を母国語とするメンバーが確認する作業を続けている。

 中村さんが現地代表を務めたNGO「ペシャワール会」(福岡市)によると、中村さんの文章が一般公開用に英訳されるのは初めて。部族同士の対立など現地の実情が英語で出回ると、現地スタッフがテロの対象になる恐れがあることから、避けていたという。仲佐さんたちは同会の協力を得て、人物や部族などの名称を伏せるなど、表現に配慮している。

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 国際保健分野の仕事をする父親から中村さんの話を聞いて育ったという仲佐さん。国際移住機関(IOM)職員としてソマリアに駐在していた15年、別の国連機関の職員数人が自爆テロの犠牲になった。そのうち2人は仲佐さんと同じ宿舎に住む友人。大きなショックを受けた。「罪を憎んで人を憎まずの精神で活動してきた中村さんの存在に救われた」と振り返る。

 メンバーが感じているのは、各国地域に固有の文化がある中、支援の現場で欧米の価値観が振りかざされることへの違和感だ。

 仲佐さんはソマリアでは現地の文化に倣い、イスラム教女性が髪を覆うヒジャブをかぶった。ヒジャブは欧米で女性抑圧の象徴として見られることもある。

 「(イスラム教女性の地位向上は)外圧でなく、彼女たちが納得できる言葉で語られるべきだ」。中村さんは寄稿文にそう記していた。「欧米的な価値観で女性の権利を主張して支援をする手法は受け入れられない」と仲佐さん。品川さんは「中村先生の言葉は、現地の文化と調和する支援や開発を考えるきっかけになる」と話している。

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 寄稿文の英訳は中村さんの足跡を紹介する西日本新聞の特設サイト「一隅を照らす」で随時公開する予定です。 (中野慧)

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