河井氏秘書逮捕 一議員の問題では済まぬ

西日本新聞 オピニオン面

 「良識の府」とされる参院で新年度予算案の審議が始まった途端に、現職参院議員の秘書らが逮捕された。それも政治とカネにまつわる事件である。安倍晋三政権や国会が、これを一議員の問題として済ますようなことがあってはならない。

 広島地検が昨夏の参院選広島選挙区で初当選した自民党の河井案里氏の公設秘書ら3人を公選法違反(買収)容疑で逮捕した。3人は、案里氏の夫の克行衆院議員(前法相)も関わった選挙運動で、車上運動員に法定上限を超える報酬を支払い、領収書の工作で発覚を免れようとした疑いが持たれている。

 公選法は、選挙運動の総括主宰者や出納責任者、秘書らに選挙違反で罰金刑などが確定した場合、候補者の当選を無効とする。今後、3人のいずれかがこの連座制の対象として起訴されれば、案里氏は失職する可能性も生じる。深刻な事態だ。

 案里氏陣営の不正の疑惑は昨秋報じられ、当時法相だった克行氏は閣僚を辞任した。その際、夫妻そろって不正への関与を否定し「しっかり調査して説明責任を果たしたい」と述べていた。その約束は果たされず、夫妻は地検が強制捜査に踏み切った今月3日も「捜査中」を理由に事実上コメントを避けた。不誠実極まりない対応だ。

 自民党は参院広島選挙区(改選数2)に現職と案里氏を擁立し、2議席独占を狙った。首相や菅義偉官房長官はとりわけ案里氏に肩入れしたとされ、党本部から案里氏陣営に1億5千万円の選挙資金が提供されたことも明らかになっている。

 資金提供自体は違法ではないが、額が他候補の10倍に上る破格の扱いで、しゃにむに案里氏を当選させようとする姿勢が金権的な選挙運動につながったのではないか、との指摘もある。

 そこで問われるのは首相や自民党の責任だ。説明責任を果たそうとしない河井夫妻の姿勢を黙認してきた。首相は3日の国会答弁でも「秘書が逮捕されたのは残念」と述べるだけで、夫妻の説明責任や議員辞職は「一人一人の政治家が判断すること」などと詳しい言及を避けた。

 有権者が納得するはずはなかろう。河井夫妻には国会の場できちんと説明を求め、自民党としての対応に問題がなかったかも調査して明らかにする。そうした厳しい姿勢が必要だ。

 国会議員の不祥事では「秘書がやったこと」「捜査中で答えられない」といった逃げ口上が繰り返される。野党も選挙違反など自身も無縁でない問題では追及が及び腰になる。それでは国民の政治不信が深まるばかりだ。今回の事件は永田町全体が重く受け止めるべきである。

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