卒業式が中止に…はかまのキャンセル料どうなる? 業者で割れる対応

西日本新聞 黒田 加那

 「大学の卒業式が中止になり、レンタルしようとしていたはかまのキャンセル料がかかるようです。どうにかならないでしょうか」。娘が今春大学を卒業するという男性から、西日本新聞「あなたの特命取材班」に相談が寄せられた。卒業シーズンを直撃した新型コロナウイルス禍。安倍晋三首相が打ち出した全国的な「休業要請」を受けて卒業式の中止・縮小が相次ぎ、貸衣装の予約取り消しも続出している。キャンセル料はどうなるのか。呉服店や弁護士に取材した。

 男性によると、娘は福岡県内の呉服店と、はかまや着物など衣装一式の貸し出し、クリーニング代を含むレンタル契約を結び、代金約3万円を前払いした。ところが、2月末になって卒業式が中止になることを知り、急きょキャンセルを申し出た。

 契約書には、契約日の1週間後から代金の30%以上のキャンセル料が発生すると記されていた。キャンセル時期が着用当日の1カ月前を切っていたため、店側は「代金の70%を差し引いて返金する」と伝えてきた。店側と交渉し、50%になったが、男性は「業者に非はないが、自然災害のようなものなのに…」と首をかしげる。

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 卒業式用の衣装レンタルをしている業者の対応はさまざまだ。

 大手呉服店の「鈴乃屋」(東京)は2日、ホームページ上にキャンセル手続き用の窓口を開設。通常のキャンセル料は1カ月前で代金の30%、5~10日前までで40%などがかかるが、今回は卒業式の有無にかかわらず、全額返金する。

 広報担当者は「(新型コロナウイルスの感染拡大で)やむを得ないと判断した」。連日、問い合わせや対応に追われている。

 実店舗やネットを通じて衣装レンタルをしている「ジョイフルまるやま」(東京)は、卒業式や学位授与式が中止となった場合には全額返金する。式典がある場合のキャンセル料は通常通りかかるという。

 2月下旬ごろからキャンセルの申し出が増えており、広報担当者は「店としても厳しい状況だが、お客さまの事情を考えた」という。

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 法律上の解釈はどうか。日本司法支援センター福岡地方事務所(法テラス福岡)の柿木翼常勤弁護士は「原則として契約通りのキャンセル料が必要。業者側の温情対応はありがたいが、全額返還を求めることは難しい」と話す。

 今回のキャンセル続出は、新型コロナウイルスの感染拡大が背景だが、その事情は考慮されないのか。柿木弁護士は「店側は衣装を提供でき、本人は着ることが可能な状況。消費者側の都合でのキャンセルという点は変わらない」と説く。

 一方で、契約書で定めていればどんなキャンセル料でも認められるわけではないという。消費者契約法は、契約解除に伴い、業者が実際に負担する平均的な損害額以上のキャンセル料を設定していた場合、上回る分は無効になると定める。

 晴れ着を着られなくなった学生、晴れ姿を心待ちにしていた保護者、経済的打撃を受ける店側…。ウイルス禍で、ぶつける場のない憤りや悲しみが広がっている。(黒田加那)

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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、卒業式を中止・縮小する学校が相次いでいます。そのため「卒業文集を完成させられなかった」「みんなで合唱を練習していたのに…」などの悲しい声が上がっています。西日本新聞は、あなたが卒業式でやりたかったこと、友だちや先生、家族に伝えたかった思い、卒業生へのエールなどを募集しています。

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