日中、国内事情に配慮 同時発表でメンツ保つ 習主席の4月訪日延期

西日本新聞 総合面 川原田 健雄 塩入 雄一郎

 中国の習近平国家主席の訪日延期が5日発表された。日中両政府はそれぞれの国内事情から、互いに訪日延期を切り出せずにいたが、日本でも新型コロナウイルスの感染が拡大したことを受け、日中同時に延期を打ち出した。訪日日程は秋以降にずれ込む見通しだが、政府関係者からは「感染状況次第では年内訪日は難しい」との声も上がる。

 「国賓訪日を十分な成果が上がるものにするには、双方でしっかり準備する必要があるとの認識で一致した」。菅義偉官房長官は5日の記者会見で強調した。

 昨年6月、習氏に直接訪日を呼び掛けた安倍晋三首相は、ぎりぎりまで実現を探った。ロシアとの平和条約交渉や、北朝鮮日本人拉致問題に進展がない中、日中関係の改善を外交のレガシー(政治的遺産)としたい意向があったためだ。

 だが、中国から広まった新型肺炎の日本国内への影響が深刻になるにつれ、保守層が習氏訪日へ猛烈に反発。首相の支持基盤を揺るがすリスクも指摘された。

 政府が訪日延期に傾く中、ネックとなったのが延期の切り出し方だった。日本側から求めれば、習氏を受け入れられないほど日本は混乱しているとの印象を国際社会に与えかねない。中国側から延期を持ちかければ「習氏が国内を離れられないほど感染が深刻だ」と受け取られる。どちらも傷つかない落とし所となったのが同じタイミングでの発表だった。

 中国側には習氏訪日を、感染阻止にめどが立ちつつあると世界にアピールする機会にしたい思惑もあった。流れが変わったのは日本での感染拡大が顕著となった2月中旬。全国人民代表大会(全人代=国会)の延期方針を打ち出す一方、官製メディアを通じて中国による日本支援の動きを強調するようになった。小中高校の一斉休校など日本の対応も報道。訪日延期の要因は日本側にもあると印象付けたい狙いが透ける。

 ただ、米中対立が続く中、習指導部は日本との連携を重視。中国経済の立て直しに向けても対日関係の強化に期待は大きく、首脳往来が滞る事態は痛手だ。

 日本にとっても中国への日本産牛肉の輸出解禁が遅れ、農林水産物の輸出増戦略に狂いが生じる。日本人拉致問題での連携強化も見通せない。日本側は秋以降をにらんで習氏訪日を再調整する構えだが、新型肺炎の終息は見通せない。外務省幹部は「年内に訪日できるかさえ今は分からない」とこぼした。 (川原田健雄=北京、塩入雄一郎)

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