新型コロナ対策 日中韓の連携強化今こそ

西日本新聞 オピニオン面

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、安倍晋三首相が今春の習近平・中国国家主席の国賓訪日延期と、中国、韓国からの入国を制限する緊急措置を打ち出した。事態の収束が見通せない中で、国内対策を優先、加速させる狙いのようだ。

 しかし、矢継ぎ早の決定はあまりにも唐突で、これまでの対策が後手に回った首相の焦りも透ける。入国制限には韓国政府が反発しており、意思疎通を欠いた日韓関係も気掛かりだ。国内事情に目を奪われ、感染症対策で鍵を握る隣国間の連携や協力が後回しになっていないか。首相には東アジア全体を視野に入れた冷静な姿勢を求めたい。

 中国の習政権は、新型ウイルスによる肺炎の拡大を受け、5日から予定していた全国人民代表大会(全人代=国会に相当)の延期を余儀なくされた。国家予算や内政・外交の基本方針を決める全人代の延期は極めて異例だ。日本でも感染が日増しに広がる状況に照らせば、習氏の訪日延期はやむを得まい。

 首相は、今春の習氏訪日に合わせて日中関係発展への新たな合意文書を交わし、関係改善を国内外にアピールする外交戦略を描いていた。ただそれは日中が不断に率直な対話を進め、目下の感染症対策でも協力の実を挙げてこそ意義を持つ。

 中国の湖北省を中心とした感染が広がる地域では医療態勢が追いつかず、感染者が8万人に上る事態を招いた習指導部の責任を問う声や経済の停滞による生活不安が増幅している。習指導部は初期対応に問題があったと認め、省トップらを更迭した一方で、反政府的な動きを封じる言論統制も続けている。

 そんな中国に対して日本が担う役割は、感染に関する情報の全面的な開示を強く求め、国際社会と連携して感染の拡大防止や治療法の確立を急ぐ機運を高めることだ。日本からも情報提供や医療支援を続け、情報の隠蔽(いんぺい)や言論の統制にくぎを刺す姿勢も忘れてはなるまい。感染者の増加が目立つ韓国との間でも同様の取り組みが欠かせない。

 日中韓は経済を中心に深く依存し合い、日中、日韓の人の往来はともに年間1千万人を超える。九州もその恩恵に浴してきた。今回の入国制限は多方面に影響が大きい。それを踏まえれば、韓国政府の理解を事前に得る必要もあったのではないか。

 言うまでもなく、国境を越えて広がる感染症は一国の取り組みだけでは克服できない。東アジアにとっては地域全体の発展を揺るがす「共通の脅威」であり、今こそ日中韓協力の真価が問われる正念場でもあろう。安倍首相はそんなメッセージも中韓に向けて発信すべきだ。

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