NPT発効50年 核軍縮の原点に回帰せよ

西日本新聞 オピニオン面

 広島、長崎への原爆投下から75年近い歳月がたつのに、今なお人類は核兵器の脅威にさらされている。これ以上、核保有が拡大しないよう何としても歯止めをかけなければならない。

 核拡散防止条約(NPT)の発効から今月で50年になった。核兵器の拡散を防ぎ、核軍縮と原子力の平和利用を追求する礎となってきた条約だ。

 核兵器保有を米ロ英仏中の五大国に限定し、核軍縮の誠実な交渉を義務付ける代わりに、他の加盟国の保有を認めない。この「NPT体制」がいま深刻な危機に直面している。

 半世紀前の米国とソ連が厳しく対立した冷戦時代に比べて、核兵器の数は格段に減ったものの、使われるリスクは逆に高まっている。「1970年代以降初めて、際限のない核競争の亡霊が現れている」とは、国連で軍縮を担う中満泉事務次長の最近の警告である。

 背景に米ロ中による近年の軍拡競争がある。中でもロシアは爆発規模を抑えた小型核の配備を進め、米国もこうした「使える核」を備え始めた。米国はロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約も失効させ、核軍拡の懸念が強まっている。

 発効50年の節目に、NPTの原点を思い出す必要がある。制定のきっかけは62年のキューバ危機だった。米国から経済制裁を受けるキューバにソ連がミサイル基地を建設しようとして核戦争の恐怖を世界が感じた。この教訓をもう一度共有したい。

 米ソ主導でできたNPTは、地域紛争が全面核戦争に拡大する危険を減らそうと、核保有を五大国以外に増やさないことに力点が置かれた。五大国の核軍縮は低調なままで、核を持たない国には「不平等」に見える。その結果、北朝鮮、インド、パキスタン、イスラエルの核開発を止められず、これにイランも続く可能性がある。

 まさに形骸化の危機にあるNPTだが、191カ国・地域(今年1月現在)もが参加し、核軍縮を巡り唯一発効した多国間枠組みである。NPT体制の再構築は喫緊の課題として取り組まねばならない。

 NPTの運用状況などを確認する、5年に1度の再検討会議が4月に始まる。現状では核保有国のうち米ロ中3国の足並みがそろわず、核兵器禁止を求める非保有国との溝も深い。新たな合意文書の採択といった成果を上げられるのか、危ぶまれている。

 核軍縮の前進には核保有国の積極的な行動が不可欠だ。唯一の戦争被爆国である日本は保有国と非保有国の橋渡し役を自任するなら、NPT体制立て直しを率先して働き掛けるべきだ。

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