武漢の実態伝える記者拘束か 不明相次ぐ 当局は「美談」報道指示

西日本新聞 国際面 川原田 健雄

 【北京・川原田健雄】新型コロナウイルスの発生地で感染が最も深刻な中国湖北省武漢市から、現地の過酷な実態を伝えてきたフリーの中国人記者が相次いで行方不明となっている。感染拡大を巡る中国政府の対応に批判が高まらないよう、当局が拘束したとみられる。習近平指導部は情報統制を強める一方、国民の団結を促す世論工作に躍起になっている。

 元国営中央テレビの番組キャスターで、2018年からフリーで活動する李沢華さんは2月中旬、武漢で取材を開始。感染者の遺体を運ぶ高額アルバイトや、封鎖された団地の様子を動画サイトに投稿してきた。

 ところが、2月26日に「見知らぬ車に追跡されている。公安関係者だ」と運転しながら切迫した様子で話す動画を投稿。同日夜には「自分や家族、国家に対して後ろめたいことはない。国家に不利なことは何もしていない」とインターネット中継で訴えた。直後、当局者とみられる人物が室内に現れて中継は途絶え、李さんは行方不明になった。

 弁護士で「公民記者」としても活動する陳秋実さんは1月24日に武漢入り。患者が廊下まであふれる病院の様子や、検査キットが足りない状況をネットで発信してきたが、2月上旬の投稿を最後に消息が途絶えた。関係者によると、2月6日に当局から拘束されたという。陳さんは1月末「私の前にはウイルスが、後ろには中国の法律の脅威が迫っている」「現地から報道を続ける。共産党を恐れるものか」と話す動画を投稿していた。感染を理由に「強制隔離」されたとの情報もあるが、1カ月を過ぎた今も解放されないままだ。

 武漢で病院の様子を伝えてきた市民記者の方斌さんも、2月9日の投稿を最後に連絡が取れなくなった。

 習指導部は、武漢の実態を伝えようとする動きを締め付ける一方、感染封じ込めに向けた医療現場の取り組みなどについて「感動的なエピソードを生き生きと語れ」と指示。官製メディアは奮闘する医師や看護師の「美談」を連日報じている。

 ただ、救急外来で働き続ける妊娠9カ月の看護師を取り上げるなど女性に自己犠牲を強いた内容も多く、ネット上では「感動どころか怒りを感じる」「こんな宣伝、ばかげている」といった反発の声が出ている。

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