「自白裏付けた」目撃供述 検証・大崎事件(15)

西日本新聞 社会面

 大崎事件では、原口アヤ子さん(92)の親族3人(当時の夫、義弟とその息子)が犯行を認めた自白が証拠の柱だった。自白の内容を裏付けたのが、被害者の死因を「首の圧迫による窒息死」とした法医学鑑定▽義弟の妻ハナさんが「夫とアヤ子の共謀場面を見た」とした目撃供述-の二つ。特に後者は、再審請求後に法医学鑑定の証拠価値が崩れる中、検察側にとって不安定な親族3人の自白を守る「最後の砦(とりで)」といえた。

 要旨は(1)アヤ子さんが1979年10月12日の事件当夜、自宅に訪ねてきた(2)その時、夫に被害者殺害を持ち掛けた(3)その後、夫と息子から犯行を打ち明けられた-という内容。一般的には、誰でも家族に不利益な供述は避ける傾向にある。それだけに「ハナ供述」の信用性は高いと評価されていた。果たして中身はどうだったのか-。

 同15日の遺体発見後、数日間の警察の調べでは「夫と息子は親子げんかの後、床に就いた」などと述べ、前記(1)~(3)には触れていない。それが同29日には「アヤ子が午後9時15分か10時15分に自宅に来て、殺害を持ち掛けた。夫は『そげんわけにはいかん』と言った」と変わる。

 同31日には「来たのは午後10時15分」と特定。「アヤ子が『うっ殺すで加勢しやい』と言い、夫は応じた」「その後、外に出て1時間半ほどで戻った夫が『うっ殺してきた』と言い、私は気になりながらも寝た」「4~5時間後に目が覚めると、息子が『加勢してきた』と言い、私はそのまま寝た」。夫らの犯行を裏付けたハナ供述は、確定審段階では一貫していた。

 昨年6月の最高裁決定は「親族3人の自白とハナ供述は相互に支え合っている」として信用性を認めた。一方で、再審開始を認めた2002年の鹿児島地裁決定は、ハナさんによる捜査段階から確定審、再審請求審に至る供述や証人尋問調書を子細に検討した上で、これを退けている。

 主な理由はこうだ。

 夫がアヤ子さんから殺害を持ち掛けられて外出し、1時間半も戻らないのを心配していたところ「うっ殺してきた」と聞かされた。息子も犯行への加担を告げているのに「自分は何も言わずに寝た」-とするハナ供述は「当時の状況、妻と母である立場に照らすと極めて不自然」とした。

 さらに、地裁が問題視したのが「時間の矛盾」だ。アヤ子さんが事件当夜の午後9時~10時半ごろの間、近所のIさん宅にいたという関係者の供述がある。ところがハナさんは、アヤ子さんが自宅に訪ねてきた時間を、時計の長針の位置と当時見ていたテレビ番組を根拠に「午後10時15分」と断定している。

 つまり、10時半までIさん宅にいたアヤ子さんが、10時15分にハナさん宅を訪れることはできず「殺害の共謀」が成り立たなくなる可能性がある。地裁は「根拠が具体的であるだけに、かえって時間の矛盾は不自然」と指摘していた。 (親族は全て仮名)

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