大震災から9年 避難所の感染対策も重要

西日本新聞 オピニオン面

 東日本大震災の発生からあすで9年を迎える。今年の「3・11」は新たな視点の課題を私たちに突き付けている。

 新型コロナウイルス級の感染が広がる中で、大規模災害に見舞われたらどうするのか-。社会全体としての対応策である。とりわけ体育館など人々が密集する避難所では、集団感染という大きなリスクが生まれる。

 ウイルス感染と災害の同時発生など考えたくもないし、「まさか起きないだろう」と誰しも思いたいものだ。それでもあえて、起こりうる難題として今から備えるべきだろう。

 思い起こしたい。そもそも近年の災害は「想定外」の連続ではなかったか。東日本大震災は東京電力福島第1原発事故が起き、熊本地震は震度7を2回も観測した。一昨年は西日本、昨年は東日本で計20都府県以上に大雨特別警報が出て、風水禍による甚大な被害をもたらした。

 自然災害と同列には語れないとしても、新型ウイルス感染が日本でもこれほど広がるとは誰が予測できただろうか。

 インフルエンザなど感染症の対策は、災害時の避難所での重要課題だと専門家が指摘してきた。未知のウイルス拡大という事態になれば、感染者や感染が疑われる人を一般の避難所に収容できないことは自明だろう。感染力や感染者数にもよるが、少なくとも医療機関をはじめ適切な収容場所を想定し、常日頃から周知しておく必要がある。

 より根本的な問題は、日本の避難所が衛生面でもプライバシー保護の面でも低水準にあることだ。共同通信が今年1月までに実施した調査によると、全国の市区町村の95%もが改善の必要を認めている。特に急がれる項目としては、健康に影響する仮設トイレや、段ボールベッド、冷暖房などが挙がった。

 国際赤十字などが1998年にまとめた国際指標「スフィア基準」に少しでも近づけたい。避難所での1人当たりの最小面積やトイレの設置数といった基準を細かく定めている。

 新型コロナウイルスの感染では、密閉空間での感染例が数多く報告された。換気もままならない現状の避難所は、感染クラスター(集団)を生む可能性がある。高齢者や持病のある人らへの配慮は特に求められる。

 「災害弱者」に対する自治体レベルの取り組みは依然十分ではない。本紙の調査によると、災害対策基本法に基づき、災害時に支援が必要な高齢者や障害者を自治体が把握して名簿に掲載する基準には、九州の主要都市でもばらつきがあった。

 新型コロナ対策が進む今も、自然災害への備えを怠れはしない。この現実を受け止めたい。

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