あの映画その後

時がたち、避難者は追い込まれる 復興政策と実態にギャップ

西日本新聞 吉田 昭一郎

あの映画その後 震災原発事故10年目へ~「福島は語る」(中)

 福島第1原発事故の被害者14人のインタビュー記録映画「福島は語る」(土井敏邦監督)の登場人物の一人、村田弘(むらた・ひろむ)さん(77)は、国と東京電力を相手に損害賠償を求めて避難者たちが闘う「福島原発かながわ訴訟」の原告団長だ。福島県南相馬市から横浜市に避難して9年。原発事故は自然災害と違って「時間がたつことによって、むしろ被害が加重される」と実感するという。

 その思いを、周りの人に聞いてほしかったのかもしれない。2月6日、テーブル間が狭くてぎゅうぎゅう詰め状態の東京駅近くの喫茶店で、村田さんは声を落とすことなく、ゆっくりと話した。同訴訟の控訴審第1回口頭弁論の法廷で語ったことだという。

 「世間では、原発事故は終わったような感じですかね。被害はだいたい終わったでしょう、賠償もだいたい済んだでしょう、だいたい復興に進んでいるはずだ、というのが世間一般の受け止め方かもしれないが、そうじゃない。今でもこの事故が原因で命を失ったり、病気になったりする人が絶えない。自殺する人が減らないんです。事故から8年も9年もたって自分で命を絶たなければならない。多くの人たちが追い込まれているんですよ」

 口頭弁論で取り上げたのは、厚生労働省がホームページで公開している「東日本大震災に関連する自殺者数」。福島、宮城、岩手各県など10都府県ごとに、震災後の自殺者数が載っている。

 年ごとに見ると、宮城、岩手は2014年以降1けたになっていたが、福島は15年の19人をはじめ、ほとんどの年で10人を超えた。18年に4人に減ったが、昨年はまた12人に増えた。これまでの自殺者は計116人。避難生活の疲労や病気悪化で体調を崩したりして亡くなる震災関連死(自殺を含む)も福島県は絶えることなく2300人を超えた。

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