家族に不利益な供述なぜ 検証・大崎事件(16)

西日本新聞 社会面

 結果として、ハナさんの供述は夫や息子の自白内容を支える重要証拠となった。事件当時50歳。なぜ彼女は家族に不利益となる供述をしたのか-。大崎事件で最初に再審開始決定を出した第1次再審請求審の鹿児島地裁(2002年)はこんな見方を示した。

 ハナさんは、夫や息子が犯行を自白する前に、2人の関与を供述したわけではなかった。被害者の遺体発見は1979年10月15日。夫は同17日に殺害と死体遺棄を認め、息子は死体遺棄を同29日に自白した。

 その29日、ハナさんは「アヤ子が事件当夜に自宅に来た」と初めて説明。31日には「アヤ子と夫が殺害を共謀するのを見た」「夫と息子から犯行を打ち明けられた」と供述するに至る。夫は21日に「アヤ子が来た」と述べており、一連の「ハナ供述」に関し、地裁決定は「夫と息子の自白に追従した可能性も十分ある」と判断した。

 2002年決定だけではない。15年後、2度目となる鹿児島地裁の再審開始決定(17年)も「既に逮捕された夫と息子が罪を認めた犯行で、2人の関与を低くしたいがため、アヤ子の関与を裏付ける虚偽供述をした可能性も動機としては否定できない」と判示している。

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 「ハナ供述」の背景にはもう一つ、警察の事情聴取を通じて、彼女が膨らませていったアヤ子さんへの複雑な感情も浮かぶ。

 いずれも農業を営むアヤ子さんとハナさん、被害者の四郎さんの自宅は同じ敷地内にあった。ハナさんは、勝ち気な性格で一族を取り仕切る兄嫁のアヤ子さんとの付き合いに日頃から苦労し、もともと良い感情を持っていなかった。関係者の供述調書からは、そんな2人の関係がうかがえる。

 ハナさんは1998年、第1次再審請求審の鹿児島地裁で、4回にわたって証言。事件当時の警察での調べについて(1)「アヤ子が、四郎やハナに無断で生命保険を掛けている。悔しくないのか」と刑事に言われた(2)アヤ子は「ハナの息子の太郎が死体遺棄を手伝った」と供述していると、刑事たちに聞いた-と説明。当時の心情について「家に1人残されて、命を狙われていると思うと恐ろしかった」「夫と息子が逮捕されたのはアヤ子たちが、あることないことを言っているせいだと思った」などと説明している。

 2017年の地裁決定は「ハナには明確な虚偽供述の動機はないものの、夫と息子が犯行を認めていることを前提に、当時のアヤ子に対する悪感情と、アヤ子を犯人と考える捜査機関の思惑とが相まって、虚偽供述を続けてしまった可能性が指摘できる」とした。 (親族は全て仮名)

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