原発事故9年 課題先送りは許されない

西日本新聞 オピニオン面

 9年前のきょう東日本大震災が発生した。多くの被災地で復旧復興が進む一方、4万8千人が今も避難生活を送る。もう9年か、まだ9年か。被災者の受け止め方はさまざまだろう。

 避難を続ける人の大半は福島県民だ。東京電力福島第1原発で起きた史上最悪の原発事故が地元の復旧復興を妨げている。1~3号機がメルトダウン(炉心溶融)を起こし、放射性物質をまき散らした。原発推進という国策に協力した地域が復興から取り残される。そんな理不尽が一日も早く解消されるよう、政府は策を尽くすべきだ。

 最大の懸案は福島第1原発の廃炉作業といえるが、課題が山積だ。まず日々発生する汚染水を浄化した水の処分方法が決まっていない。放射性物質のトリチウムを含み、海洋放出すれば風評被害を招くと地元漁業関係者が強く反対している。

 処理水は構内に林立するタンクに貯蔵されている。増設には限度があり2年程度で満杯だ。いつまでも先送りはできない。

 トリチウムは自然界にも存在し、国内外の原発でトリチウム水を海に放出している。この問題で政府の小委員会は海洋放出がより確実との結論を出した。それしかないのなら、政府は地元と対話を重ね、理解を得る努力が求められる。

 廃炉作業で最難関となる溶融核燃料の取り出しも政府や東電の計画通りに進む保証はない。福島の復興に関わる廃炉完了時期の見直しは必要ないのか。十分な説明をすべきである。

 より根源的な問題は、政府の描く原発の将来像が不鮮明なことだ。原発回帰の産業界と、脱原発を求める声も多い世論の間であいまいな態度が目立つ。

 政府の長期エネルギー需給見通しでは、2030年の原発の電源シェアを20~22%と置いたが、現状で再稼働できた原発は九州電力の川内1、2号機、玄海3、4号機など9基だけだ。東北電力女川原発2号機が再稼働の前提となる新規制基準に先日適合したが、20~22%に必要という30基には遠く及ばない。

 新規制基準が求める特定重大事故等対処施設の完成が遅れ、川内原発などが相次ぎ運転停止に入る。政府は原発を安定したベース電源と位置付けるが、その実現には課題も多い。

 他方、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの発電シェアは世界中で拡大しており、30年に22~24%という政府目標は見劣りする。石炭火力発電を推進する日本の政策には地球温暖化対策の観点から批判も強い。

 原発と再エネのバランスは今のままでよいのか。政府はもう一段踏み込んだ検討をして、国民的議論を喚起してほしい。

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