協調性のある人ほど復讐する?!日本人の心性を脳科学的アプローチで解説

西日本新聞

 冒頭から興味深い話で始まる。「カミカゼ遺伝子」の話だ。ここで言うカミカゼとは、第2次世界大戦の特攻隊に用いられる呼称としてのカミカゼを指す。ほとんどの人は、カミカゼ特攻隊を戦争が生んだ狂気と考えているのではないだろうか。

 これまで、いじめ、サイコパスなど取り扱いの難しいテーマに対して、脳科学の視点から果敢にアプローチしてきた著者は、このカミカゼ特攻隊について、「日本人の脳」が持つ遺伝的傾向だと説明する。

 長年語り継がれてきた忠臣蔵の物語を紡ぎ、支持してきたのも「日本人の脳」だ。これまで、伝統や文化、教育によって受け継がれてきたと考えられていた日本人の心性は遺伝子レベルの問題だというわけである。

 そうなると、戦後教育というものがずっとなされてきたにもかかわらず、日本人の本質は変わらないことになる。そこから思い出すのは、少し前にニュースで連日報じられていた日大アメフト選手による不正タックル問題だ。このとき、悪質な反則タックルをさせるまでに選手を追い込んだ指導部のやり方が特攻隊のときとそっくりだという指摘が多数なされていた。

 つまり、あの事件は他人事ではなく、「日本人の脳」を持っている人なら誰でも、あの日大の選手や指導者になりうるということだ。さらに、本書によれば、それをバッシングするのも、「日本人の脳」を持つが故ということになる。もちろん、本書で言う「日本人の脳」とは、そういう遺伝的傾向をもった人の割合が日本には多いという意味で、全員がそうということではないが、日本で暮らす身であれば、無視できない問題だ。

 その大きな特徴が日本人の美徳として語られる「協調性」で、協調性の高い脳を持つ人ほど、復讐したい、他人を罰したいという心理が強く働くのだという。

 本書はWebメディアでの連載がベースになっているため、他にも、毒親、同性愛、ブラック企業など、そのときどきで話題になったことを科学的なエビデンスをもとに論じていて興味が尽きない。

 

出版社:講談社
書名:空気を読む脳
著者名:中野信子
定価(税込):946円
税別価格:860円
リンク先:http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000310633

西日本新聞 読書案内編集部

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