働き盛りの世代にこそ手にしてほしい。現役看護師が描くリアルな介護小説。

西日本新聞

 主人公はリハビリ病棟で働く35歳の看護師・大八木新菜(おおやぎにいな)。退院支援を主とした病棟で働く彼女は、患者とその家族を幸せにするお手伝いをするリハビリナースの仕事に満足感を得ているものの、自分勝手な希望を押しつける患者家族に悩まされる日々だ。母を元通りにするまで帰すなと威張り散らす息子。退院したら誰が看るかで揉める家族。寝たきりの父を自宅で介護するために懸命に介護指導に取り組む娘。そこには家族介護の難しさが浮かび上がる。

 本作は、医療従事者と家族の立場から介護問題の核心を突いた一冊だ。超高齢社会を迎えている日本。昔は死ぬまで入院可能だったという病院も、時代の流れとともに変わり、初めから入院期間が設けられている。一定の期間内に退院させなければ、国が病院への診療報酬を負担してくれなくなるので、どこの病院でも今は退院支援に力を入れている。だが、一生入院できる、良くなるまで入院できる、と思っている人も少なからずいることだろう。介護問題はいつ自分が当事者になってもおかしくないほど身近なものになっている。しかし、親や家族はいつまでも元気に変わらず生活してくれるものと当たり前に考えている人も少なくないはずだ。

 実際に本作でも、新菜が看護師として介護に向き合う姿と、娘として母親の介護に備えようとする姿が描かれているが、患者家族に常日頃かけてきた言葉がどれほど難しいものなのかを如実に実感している様子が見て取れる。

 「介護に正解も間違いもありません。みんな正しくてみんな違う。それでいいんです」

 新菜のこのセリフに現役看護師である著者の想いが込められているように思う。重くなりがちなテーマをあっという間に読ませる軽妙な筆致も実に見事で、リアリティを感じつつお仕事小説としても面白く読める。介護問題を身近にとらえるきっかけの一つとして、新菜と同じく働き盛りの世代にぜひ手にしていただきたい。

 

出版社:双葉社
書名:病院でちゃんとやってよ
著者名:小原周子
定価(税込):759円
税別価格:690円
リンク先:https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-52317-1.html

西日本新聞 読書案内編集部

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