これまで「常識」と思われてきたことを疑うところから始める獣害対策

西日本新聞

 丹精を込めたスイカをタヌキが食べてしまう、イノシシが田んぼを荒らしてしまう、シカがミカンの実だけでなく茎も葉っぱも食べてしまう。こうした農家の悩みが典型的な獣害である。被害を受ける回数が増え、やってくる害獣の頭数も増えているというのが一般的な状況で、獣害の深刻度は増しているようだ。

 では、こうした獣害に農家の人たちはどのような対策を講じているのだろうか。動物たちが入れないように田んぼや畑を柵や網で囲むとか、害獣の数そのものを減らす駆除の工夫をするとか、さまざまな試みがされているのはよく知られている。しかし、本書はこうした「常識」を疑うところから獣害対策を提案しているのが何よりの特徴だ。そして「常識」にとらわれがちな男性を批判する意味で「女性がやればずんずん進む」という副題が付けられた。つまり、女性たちの多くがそうであるように、決まりきった考え方に拘泥しないことが獣害対策のポイントだというのだ。

 もちろん、柵を作って作物を守ることも大切なので、柵作りやその管理についても論じられている。しかし、もっと大切なのは害獣が姿を隠すことができる「ひそみ場」、そして「餌場」をなくすことだという。ちょっとした草の茂みや枝を切り忘れた垣根なども「ひそみ場」になる。また作物だけではなく収穫後の後片付けがしっかり行われていないなど、害獣にとっての「餌場」はたくさんあるらしい。「ひそみ場」と「餌場」を集落ぐるみでなくしていくことが、獣害対策のポイントだというのが本書のおもな主張なのだ。

 どうやって「ひそみ場」や「餌場」をなくしていくか。これについては、本当に詳しく説明されている。簡単に身のまわりで始められることから抜本的な対策まで、懇切ていねいにイラストや写真も交えた具体策が並ぶ。きっと村の生活、農業の現場を経験している人ならすぐに思い当たることが多いに違いない。

 本書は、著者が指導してきた獣害対策の実践・経験にもとづいて執筆されていることも特徴で、それだけに説得力もある記述で満ちている。獣害に悩む人たちに、ぜひ一読することを勧めたい。

 

出版社:農文協
書名:決定版!獣害対策
著者名:井上雅央
定価(税込):1,980円
税別価格:1,800円
リンク先:http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_454013108/

西日本新聞 読書案内編集部

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