いかりや長介さんの思い出 響くだみ声…会議凍る

西日本新聞

放送作家・海老原靖芳さん聞き書き連載(1)

 会議室は何とも言えない雰囲気が漂っていました。一言発するのもはばかられるような…。空気って、重さなんてないですよね。でも、その会議室はよっぽど酸素か二酸化炭素か、あるいは窒素の濃度が高かったみたいです。重い、ああ実に重たい。空気は肩にずしりとのしかかりました。

 目の前に座っている5人は、超の付く有名人。足を組み、腕も組んで、顔はたばこの煙が上る天井を向いたまま。ブラウン管(古い!)の中で見る顔とは、随分違う。皆、ずっとけだるそうで不機嫌でした。沈黙の時間は流れるばかり…。

 もう35年ほど前、東京・フジテレビでの会議です。今はお台場(港区)に本社がありますが、当時は新宿・河田町にありました。5人が出演するのは毎月1回放映されるお笑い番組。視聴率は常に20%超え。テレビ離れが進んだ今では考えられない数字でしょう。「お化け番組」でした。

 番組の放映2カ月前から週1回の打ち合わせ。放送作家が顔を合わせ、1回目は出演者にコント台本を披露します。前日にせっせと夜なべをして、手袋を編んで…いや、台本をこしらえて。仲間の放送作家とともに、この日に向けて、頭が1周するぐらいひねりました。それじゃ、あの首がぐるぐる回るホラー映画、そう「エクソシスト」だって。

 当時三十路(みそじ)前の私は、この世界に入って2年目のフリーの放送作家。若いからって、許される世界ではありません。日本を代表するお笑いグループのリーダーは台本を一瞥(べつ)。「つまんねーな」。だみ声が会議室に響いたのを覚えています。周囲は凍り付きましたね。お笑いなのに、笑っちゃいけない雰囲気です。これって悲劇か喜劇か。触らぬリーダーにたたりなし。

 その番組の名は「ドリフ大爆笑」。つまんねーなの一言で、会議室を冷凍庫にしてしまったのはザ・ドリフターズのリーダー、いかりや長介さん。他の4人は推して知るべし。加藤茶さん、志村けんさん、仲本工事さん、そして高木ブーさんです。

 おっと、自己紹介を忘れていました。九州は西の端、長崎県佐世保で生を受け、上京しお笑いの放送作家で生計を立ててきました。現在は故郷で暮らし、子ども向けに落語の寺子屋をやっています。海老原靖芳と申します。66歳。つらいときもあったけれど、笑いは心の処方箋でした。しばらくの間、お付き合いください。(聞き手は西日本新聞・山上武雄)

………………

 海老原靖芳(えびはら・やすよし) 1953年1月生まれ。「ドリフ大爆笑」や「風雲たけし城」「コメディーお江戸でござる」など人気お笑いテレビ番組のコント台本を書いてきた放送作家。現在は故郷の長崎県佐世保市に戻り、子どもたちに落語を教える。

※記事・写真は2019年06月17日時点のものです

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