「不存在」の証拠次々に 検証・大崎事件(17)

西日本新聞 社会面

 「私は第2次再審請求から弁護団に入り、証拠開示の問題をやってきた。私たちが開示を求め、検察官が『不存在』と説明した証拠が次々に出てきた。その不正義には全く目もくれず(中略)この決定には到底納得できない」。昨年6月、再審開始を取り消した最高裁決定が出た直後の記者会見で、泉武臣弁護士は怒りを抑えながら語った。

 大崎事件は地裁、高裁で3度の再審開始決定を受けながら、検察官抗告により再審の扉は閉ざされたままだ。一方、再審弁護団は検察側との25年に及ぶ攻防の中、証拠開示で成果を上げてきた。

 弁護側は開示済みの捜査資料を踏まえて「存在するはずだ」という根拠を示しながら、別の捜査記録を特定して開示を求めた。第2次再審請求で福岡高裁宮崎支部が開示を勧告すると、検察側はそれまで「ない」としていた証拠を213点も出してきた。

 第3次再審請求でも、鹿児島地裁の積極的な訴訟指揮もあり、開示された64本のネガフィルム原本から、弁護団は1713枚の写真を印画。うち約300枚を厳選してパワーポイントのスライドに落とし込み、2017年1月、裁判所に対しプレゼンテーションを行った。検察側主張の不自然さを視覚に訴える新たな立証戦略だった。

 写真群を整理する中で弁護団は、「視覚による立証」が時に言葉によるそれを超えた説得力を持つことを実感したという。

 その一つが、原口アヤ子さん(92)が「義弟の二郎さんに被害者殺害を持ち掛けた」とされる場面。警察が現場で撮影していた「行動再現写真」には、2人のすぐそばに目撃者である義弟の妻ハナさんが写る。検察側主張は、ハナさん宅を訪れたアヤ子さんが目配せして義弟をわざわざ戸外に連れ出した上で、殺害を共謀した-との設定だった。

 プレゼンを担当した泉弁護士は「ハナさんは2人から見えない場所で聞き耳を立てていたわけではなく、すぐ傍らに写っている。目撃した状況としてはあまりに不自然」と訴えた。

 事件の入り口となる「共謀シーン」の存在に疑問を生じさせる再現写真。弁護団は「裁判所が無罪方向の心証を深めたはずだ」と手応えを感じた。地裁は17年6月、2度目となる再審開始決定を出した。

 再審請求制度には審理の進め方の規定が少ない。証拠開示を巡っても、通常審では一定の法整備が進む一方、再審請求審は「進化」から置き去りにされている。事件の真相究明の鍵を握る「隠された証拠」の開示。鹿児島県警は「大崎事件にかかる捜査資料は、金輪際存在しない」とするが、泉弁護士は「捜査機関が握る証拠はまだあるはずだ」と確信している。 (親族は全て仮名)

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 次回は再び、被害者の死因を巡る「法医学鑑定」に話題を戻す。

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