介護士が苦悩の感染防止 消毒1日数十回「接触しない判断ない」

西日本新聞 社会面 小林 稔子 郷 達也

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、介護や福祉の現場にも深刻な影響を及ぼしている。各地の高齢者施設などで集団感染が相次ぐ中、仕事上、利用者との濃厚接触が避けられない担当者は感染リスクの不安を抱えながら働く日々。施設では一斉休校に伴う人繰り悪化や解消されないマスク不足など、取り巻く環境の厳しさに悲痛の声が上がる。

 今月上旬、福岡市で訪問介護をする女性(27)は、利用する高齢者の手を引いて部屋の中を移動した。利用者が落ち込んでいれば、相手の手に自身の手をそっと添わせる。「接触」は欠かせないケアの一つだ。

 感染すれば重症化しやすい高齢者と密閉空間で濃厚に接触する-。介護現場ではその状況は避けて通れない。ほかの仕事よりも感染リスクは高く、愛知県や兵庫県の福祉施設では「クラスター」と呼ばれる感染者集団が形成されたとされるが、女性は「接触しないという判断はできない」と言い切る。一方で「もし自分がウイルスをもらい、うつしてしまったら…。普段の接し方でいいのかどうか」と複雑な胸中も明かす。

 女性の担当は、要介護度の高い高齢者が大半。会社から職員一人一人に支給された手洗い用ソープや自分専用の消毒液を持ち、多い日で1日に5、6件を訪問。おむつ交換や入浴、食事の介助など、作業ごとに念入りな消毒を欠かさない。消毒回数は1日に数十回にも上る。

 寝たきりで意思疎通ができない利用者は、マスクでこちらの表情が見えないと不安がることも。その際はマスクを着けず、小声で会話量を減らして対応する。

 7歳と5歳の子どもを育てるシングルマザーで、感染防止に常に気を張る。「家族で感染者が出るとすれば自分が最初だと思う」。女性は苦悩をにじませる。

    ◇    ◇ 

 九州にある難病専門入居施設の管理者(32)は、「八方ふさがり」と人員不足を嘆く。通常は20~80歳代の入居者25人への対応をスタッフ約50人で回しているが、一斉臨時休校を受け子どもがいるスタッフに休みが出た。ただでさえ人手が足りない中、1人でも欠けると現場に大きく響く。関連施設との人の行き来も禁止となり、臨時スタッフも見込めない。

 施設は独自の警戒レベルを最高の5に設定。緊急でなければ家族でも面会禁止といい、スタッフも緊張した対応に追われる。「難病の入居者にとって、一つケアが抜けると生命に関わる。気は抜けない」。管理者は言葉に力を込めた。

 マスク不足にも依然、明るい兆しは見えない。福岡県内の病院では2月中旬から事務系などの職員へのマスク支給が中止された。専門職や病棟スタッフなどへも1人1日2枚から1枚に。その上、マスク内面にガーゼを当てて「数日使用するように」と通達があり、3月初旬には「数週間の使用」に変わった。「もうすぐなくなるのでは」とスタッフ間に不安が広がる。

 事務職男性(39)は、実家からもらったマスクでしのいできたが、残りもわずか。「店頭には売っていないし、どこで手に入れればよいのか」と頭を抱える。 (小林稔子、郷達也)

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