夫の死後、住む家失わないため…「配偶者居住権」4月から施行

西日本新聞 くらし面 下崎 千加

 夫の死後、遺産を子どもと分けたら、住む家を失った-。女性たちが晩年、こんなトラブルに見舞われるのを防ぐため、家の所有権を手放す代わりに、長期間無償で住み続けられる権利「配偶者居住権」が新設された。改正民法が施行される4月以降に作成する遺言や、4月以降に亡くなった人の遺産分割協議などで同権を設定できる。

 九州北部の70代の女性は、85歳で亡くなった夫が残した自宅(評価額約2千万円)と預貯金(約2千万円)をどう分けるかで、夫の息子ともめている。

 息子は、若くして亡くなった夫の前妻の子ども。50歳のとき15歳上の夫と出会い結婚したが、既に家を出ていた息子とはなかなか打ち解けられなかった。20年連れ添い、夫をみとった。

 法定通りだと約2千万円ずつ分けるため、自宅か預貯金かを選ぶことになる。女性は近所に友人が多く、住み慣れている自宅を選びたい。だがそうすると預貯金を相続できず、自分の年金は月数万円しかないため生活費に困る。預貯金を選ぶと自宅を失う。家庭裁判所の調停で、息子側と話し合いを重ねている。

 今後、同様のケースが起きたとき、トラブル回避に効果的なのが配偶者居住権の設定だ。女性は男性より平均寿命が長く、夫に先立たれる場合が多いが、主婦やパートで年金額が低いことも少なくない。家が夫名義で、都市部にあったりして評価額が比較的高い場合、子どもと不仲だったりすると、老後の暮らしが不安定になりかねない。

 同権を設定したい場合、自宅所有権を「配偶者居住権」と「負担付き所有権」に分ける。配偶者が相続するものの評価額を小さくし、預貯金をより多く相続できるようにする。

 また、通常の家の遺贈だと、後妻などで配偶者と子どもに親子関係がなければ、配偶者の死後、子どもは家を相続できない。この点、最終的には相続できる上に、負担付き所有権で評価額が下がるので節税になり、子どもにも利点がある。

 では具体的にどう活用するのか。相続問題に詳しい岡本成史弁護士(福岡市)によると、同権は(1)被相続人(財産を残す人)の遺言(2)死後の遺産分割協議(3)家庭裁判所の審判-などで設定できる。

 お勧めは(1)だ。遺言があれば、遺族が時間をかけて財産の在りかを調べたり協議したりする必要はなく、速やかに遺産分けできる。一方、(2)はお互い納得して決着を図る必要があり、容易ではない。決着せず(3)になった場合も、配偶者側にメリットが大きい同権を、裁判官が設定するかは見通せないという。

 「ただ遺言を書く前に、住み続けたいかくれぐれも配偶者に確認を。『広い家に1人で住むのは大変』と住み替えを希望している場合、居住権を得ても家を売る権利はなく、預貯金も少ししか相続できないなどトラブルの元になります」

 遺言は、自ら手書きする「自筆証書遺言」=記入例=と、費用はかかるが書き方の誤りを防げる「公正証書遺言」がある。自筆証書遺言は、昨年1月から「財産目録」がパソコンでの作成も認められるなど条件が緩和されている。(下崎千加)

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ