「苦海どこまで」8人全員の訴え退ける 水俣病賠償訴訟、福岡高裁

西日本新聞 鶴 善行

 胎児、幼児期にメチル水銀の汚染被害を受けたとして、未認定患者でつくる水俣病被害者互助会の8人が国と熊本県、原因企業チッソに計約3億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が13日、福岡高裁であった。西井和徒裁判長(増田稔裁判長代読)は、原告らが訴える水俣病特有の感覚障害について「メチル水銀曝露(ばくろ)(摂取)との因果関係は明らかではない」と判断。一審熊本地裁判決の国側敗訴部分を取り消し、8人全員の請求を退けた。原告側は上告する方針。

 8人は水俣病が公式確認された1956年前後に熊本、鹿児島両県で生まれた60代の男女。いずれも胎児、幼児期に汚染された魚介類を多食したことで、手足先の感覚障害が生じたと主張していた。一審は、主に同居家族に水俣病の行政認定患者がいるかどうかで原告を線引きした。

 控訴審判決は「感覚障害などの症状が他の疾患による可能性がある場合、水俣病である可能性は減殺される」との枠組みを提示。メチル水銀に曝露した可能性がある時期の頭髪水銀値の測定結果が残っていないことから、摂取の有無、程度は、汚染魚介類の摂食状況や同居家族に認定患者がいるかどうかなどを総合考慮するべきだとした。

 その上で、原告個々の状況を検討。一審で患者と認められた原告団長の佐藤英樹さん(65)については「胎児期と乳幼児期に高濃度のメチル水銀に曝露した」と認定しながら、他の疾患に罹患(りかん)していることを踏まえ「感覚障害は水俣病に起因するものではない」と結論付けた。

 また、2004年に最高裁で勝訴した関西訴訟にも携わり、今回の控訴審で原告8人を水俣病と診断した阪南中央病院(大阪)の医師2人の診断結果は「(感覚障害の診断で)短時間に多数回の刺激を与えるなど、検査結果の正確性に対する配慮を欠いている」として採用しなかった。

 14年3月の一審判決は、3人を水俣病と認め国側に計約1億1千万円の賠償を命じ、5人の請求を棄却。原告全員と国、熊本県、チッソの双方が控訴した。 (鶴善行)

【水俣病と認定基準】 水俣病は、チッソ水俣工場(熊本県水俣市)が不知火海に流したメチル水銀を含む排水に汚染された魚介類を食べた人が発症した中毒症。1956年5月1日に公式確認、68年9月に公害認定された。国が77年に定めた認定基準は手足の感覚障害に加え、視野狭窄(きょうさく)や運動失調など2種類以上の組み合わせが必要とした。2013年の最高裁判決は「複数の症状がなくても認定の余地がある」と判断。環境省は14年、感覚障害だけでも認定可能とする一方、申請者側に水銀摂取の客観的資料を求めたため認定は広がっていない。

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