「人と思えぬ」まさかの全員敗訴 水俣病賠償訴訟、福岡高裁

西日本新聞 社会面 吉田 真紀

典型症状切り捨て「何が水俣病か」

 まさかの「全員棄却」に、誰もが言葉を失った。13日の福岡高裁判決は、一審熊本地裁が患者と認めた佐藤英樹原告団長(65)ら3人も含め、全員を「水俣病ではない」と切り捨てた。幼少期から原告たちを悩ませた感覚障害などは水俣病の典型症状とされてきた。「私たちが水俣病でないなら、何が水俣病か-」。提訴から12年超。「史上最悪」の判決に、原告たちは「この12年がまばたきするうちに消えた」と憤り、そして涙を落とした。

 「水俣病のいろんな症状は幼少からあったと訴えてきたのに」。全員勝訴を期して臨んだ判決の後、佐藤さんは、うつむいた。

 漁師だった祖母と両親は認定患者。祖父も劇症型水俣病とみられる症状で亡くなった。幼少期から毎日のように、取れたての魚介類が食卓に並んだ。振り返れば幼少期から、こむら返りなどに苦しんできた。

 しかし判決は、佐藤さんの高濃度のメチル水銀摂取は認める一方、感覚障害は「アルコール性ニューロパチー(長期のアルコール常用者にみられる感覚運動障害型の末梢(まっしょう)神経障害)の可能性がある」などと指摘、総合的に検討し「水俣病と認めるには足りない」と結論付けた。

 へその緒のメチル水銀値も示していた佐藤さん。「子どものころから酒を飲んでいたというのか。本当に総合的に判断した結果なのか」。国の意向を忖度(そんたく)したかのような内容に不信感を募らせた。

 一審では水俣病訴訟史上で過去最高の賠償額1億500万円を認められていた原告の大堂進さん(60)は体調不良が続き、法廷に足を運ぶこともできなかった。一審に続き棄却された西純代さん(67)は涙ぐみ「こんな不当な判決、大堂さんに伝えられない」と思いやった。

 佐藤さんと同様に「感覚障害があるとしても複数の他の疾患の可能性がある」とされた緒方博文さん(63)は「人が出したとは思えない判決。私たちが水俣病でないと言うなら、どんな人が水俣病か示してほしい」と訴えた。公式確認から64年。車椅子で判決を聞いた倉本ユキ海さん(65)は「だから水俣病は64年たっても解決しないんだ」。懸命に言葉を絞り出した。

 闘いは最高裁に移る。「みんなが認められないと笑えない」。地域が、住民たちが味わってきた苦しみから目を背けさせないために。原告たちは全員勝訴を諦めない。 (吉田真紀)

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