理想の隠居像を積み重ね CS「三屋清左衛門」シリーズ4作目 北大路欣也さん

西日本新聞 山上 武雄

 武士の隠居後の人生を描いたオリジナル時代劇「三屋清左衛門残日録 新たなしあわせ」(山下智彦監督)が14日午後7時からCS放送の時代劇専門チャンネルで放映されます。藤沢周平の同名小説などが原作で、2016年に始まったシリーズは今回が4作目。主人公の三屋清左衛門を演じる北大路欣也さん(77)が東映京都撮影所(京都)で共同インタビューに応じ、主人公への思いや俳優生活について語りました。

 -清左衛門シリーズの4作目。シナリオを読んだ印象は。

 ★北大路 父親の面が出ているし、清左衛門のすべてが出ている。1作、2作、3作があって本作。この積み重ねがこれかなと思う。

 -自ら演ずる清左衛門について。

 ★北大路 清左衛門は私にとって理想。あこがれの男子。こんな人が存在したらすごいな。こういう人になりたい。この役になって日々支えられている。作品は実生活との距離がない。今を生きている時代劇と思う。現代より現代的。

 -清左衛門の魅力とは。

 ★北大路 すべて。人に対しても、自分に対しても分相応。隠居になったとき、身を引いてわきまえている。清左衛門らしい生活。家内はいないけども、人間の奥ゆかしさがある。こういう役をやらせてもらえていること、作品に出合えたことは冥利(みょうり)。永遠のヒーローです。

 -北大路さんにとって理想的な老い方は。

 ★北大路 この作品でケヤキの老木に語り掛けるシーンがあります。そこであることを思い出した。若い頃、映画「八甲田山」(1977年)で40日間雪中行軍をやった。氷点下、現場まで2時間歩いた。撮影20日目ごろ、脚本の橋本忍先生が、丘のところを指して雪をかぶるブナの木について話した。「あのブナの木を見てごらん。厳しい自然の中であそこにずっと悠然としている」と言われた。実は(撮影が)「きつい」って誰かに私がつぶやいたことが先生の耳に入った。その戒めなのでしょうね。「見事なもんだね、ブナの木は何一つ文句を言わずにいる」と指摘された。清左衛門の生き方のようにも感じた。私の実人生もそうありたい。

 清左衛門は隠居の身だけれども活躍している。僕も後期高齢者。果たしてこのような隠居ができるかどうか。理想とされる隠居像。

 -シリーズごとに、清左衛門の変化はあるか。

 ★北大路 変化するのは僕。僕が成長しない限り前に進めない。1作目で教わったこと、2作目に出合ったこと、3作目で感じたことを含めて成長させてもらっている。これで私が成長しなければ5作目はない(笑)。

 -原作者の藤沢周平さんの世界観について。

 ★北大路 人は生きているのはでなく生かされていると思わせてくれる。それぞれの役目を持って生かされているという雰囲気が先生の作品にある。私も役をもらって生かされている。心が洗われる。

 -若い頃からこの東映京都撮影所に通った。縁のある場所。

 ★北大路 これまで立派な先人を見てきた。その背中を見ながら追い掛けて仕事をした。この撮影所で今も先人の目が光っていると思う。萬屋錦之介さん、高倉健さん、父である市川右太衛門、片岡千恵蔵先生…。それを感じながら、今を一生懸命やらなければと思っている。

 -伊東四朗さん、三田佳子さん、小林稔侍さんと共演している。

 ★北大路 「変わりませんな」という台詞(せりふ)があるけど、伊東さんとは何十年もご一緒した。三田さんからは「懐かしい」って喜んでくれた。稔侍さんから「一緒に仕事ができてよかった」とメールが来た。みなさんとやれたのは本当にうれしい。本当に。 (文・山上武雄)

 ▼きたおおじ・きんや 1943年、京都市生まれ。56年、映画「父子鷹」で父、市川右太衛門と共演しデビュー。映画「八甲田山」、「仁義なき戦い」シリーズ、「七つの会議」、テレビでは「旗本退屈男」「竜馬がゆく」など。最近では「三匹のおっさん」でコミカルな役を演じた。福岡・筑豊を舞台にしたドラマ「青春の門」(1976年)では川筋気質の伊吹重蔵役を好演。大河ドラマ「北条時宗」で、宋出身の博多商人の謝国明を演じた縁で、博多祇園山笠では集団山見せで西流の台上がりを務めた。

 「三屋清左衛門残日録 新たなしあわせ」あらすじ 東北の小藩が舞台。趣味の釣りや道場通いで充実の隠居生活を送る、前藩主側近の三屋清左衛門。ある日、嫁に出した娘奈津(美村里江)が帰ってくる。何か悩みがあるようだ。一方、藩の奥を仕切っていた滝野(三田佳子)が怒っているので、なだめてほしいと親友の町奉行・佐伯熊太(伊東四朗)から相談を受ける。調べると、清左衛門を前々から快く思っていなかった朝田家老(金田明夫)が関わることが分かった。娘のことも…。不穏な空気が漂う中、清左衛門が動き出す。小林稔侍、麻生祐未、優香らも出演。

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