コロナ対応、尽きぬ懸念 米トランプ大統領が非常事態宣言

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

 【ワシントン田中伸幸】新型コロナウイルスへの対応を巡り、トランプ米大統領が国家非常事態宣言に踏み切った。米国内での感染拡大に加え、社会不安から景気後退入りを危ぶむ声も急速に広がるだけに妥当な判断と言える。だが、対応が後手に回っている印象は否めず、危機に立ち向かうリーダーとしての自覚に疑問を抱かせる言動も。危機対応が奏功するのか、懸念は尽きない。

 「これまでの米国の素晴らしい対応と同様、今回も多数の命を救うだろう」。13日、ホワイトハウスで非常事態を宣言したトランプ氏はこう豪語。野党民主党の大統領候補者らから連日、検査態勢の不備など対応の遅れを批判される中、検査実施に協力する企業の幹部らと共に記者会見に臨み「団結」を演出し、危機を乗り切る自信を示した。

 宣言はもともと、欧州からの渡航制限を発表した11日のテレビ演説で発表する可能性がささやかれていた。ところが宣言はなく、翌日のニューヨーク株式市場の株価は暴落。感染拡大が深刻な州や市で非常事態宣言が相次ぎ、イベントの中止などを含めた経済活動の停滞の影響から、景気減速が一気に現実味を増した。

 トランプ氏に好意的な与党共和党寄りのメディアからも「テレビ演説は失敗し、事態を掌握できなくなりつつある」と指摘が上がり、沈静化を図らざるを得なくなったとみられる。株式市場は非常事態宣言を好感し、株価は大きく回復したものの、場当たり的な対応には不安を残した。

 リーダーとしての言動にも疑問がつきまとう。会見で検査の遅れをただす記者に、トランプ氏は「私には全く責任がない」と反論。11月に大統領選を控え、失政批判を避けたいところとはいえ、民主党のオバマ前大統領らを念頭に過去の政権に責任を押しつけ、自身の対応を正当化しようとする態度からは、国民の不安を誠実に受け止める姿勢は感じられない。

 感染拡大阻止のため、医師らが国民に握手を控えるよう促しているにもかかわらず、会見中に企業幹部と握手したり、マイクを触ったりした。トランプ氏と対立する主要メディアはこぞって「危機感を欠き、依然として問題を過小評価しようとしている」との批判を浴びせた。

 トランプ氏の対応を巡っては、保守の支持層から「民主党やメディアが騒ぎを大きくしている」といった擁護論が強く、現時点で支持率に大きな変動はない。ただ、約束した早期の検査態勢構築などに手間取り、混乱を取り繕うような対応が続けば、2005年のハリケーン「カトリーナ」への対応が遅れて支持率急落を招いた共和党ブッシュ政権の二の舞いになりかねない危険をはらむ。

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