習近平氏の訪日延期、政治日程に余波も 井上正也・成蹊大教授に聞く

西日本新聞 国際面 塩入 雄一郎

 4月上旬で調整されていた中国・習近平国家主席の国賓としての日本訪問が、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に延期された。対中事情に詳しい井上正也・成蹊大法学部教授(日本外交史)は、延期が「日中関係に与える影響はない」と指摘する。今後の展望を聞いた。 (聞き手・塩入雄一郎)

 -延期の理由をどう考えるか。

 「表向きは、新型コロナウイルスにより訪日準備が整わないとされた。だが、習氏を迎えるに当たり日本側の歓迎ムードが思ったほど盛り上がらない現状を、中国側が気に掛けたという側面もある」

 -延期の影響はないと。

 「日中両国間には現在、大きな懸案がなく、急いで対応すべき課題が先送りされることになったわけでもない」

 「ただ、国内的に見ると、安倍晋三首相が習氏の訪日、夏の東京五輪・パラリンピック衆院の解散総選挙という大きな政治日程を思い描いていたとすれば、その流れはかなり崩れたとは言える」

 -習氏訪日は昨年6月、安倍首相が直接要請した。狙いは何だったのか。

 「2015年ごろから日中関係は好転しており、日本は経済分野で中国との相互依存をさらに深めていくことは悪い選択肢ではないと考えている。良好なムードが続くうちに、これまで滞っていた諸課題も進める機会にしたかったのだろう」

 -諸課題とは。

 「中国が掲げる巨大経済圏構想『一帯一路』において、第三国市場で日中の共同開発を行うことや、日中韓の自由貿易協定(FTA)などの経済連携が一つ。安全保障では、沖縄県・尖閣諸島の問題。さらに、日中は防衛当局間の相互通報体制『海空連絡メカニズム』の運用開始で合意しているが、実効性を高めていく必要もある」

 -訪日では、日中関係を規定する「第5の政治文書」が作成されるとみられていた。

 「中国の歴代の国家主席は、10年に1度のペースで日本との間で交わしてきた共同声明などを誇示してきた。『第5の政治文書』も日本側が作りたいのではなく、習氏が外交成果を中国国民に示したいという意思が働いている」

 -年内の訪日は実現するか。

 「新型コロナウイルス次第で見通せない部分があるが、日本の世論調査でも習氏訪日に賛成している人の割合の方が多く、ウイルスが終息して準備に取り掛かれば年内でも実現可能だ」

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 いのうえ・まさや 1979年、大阪府出身。神戸大大学院法学研究科博士後期課程修了。香川大准教授などを経て2017年から現職。主な著書に「日中国交正常化の政治史」。

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