川内1号機、対テロ「着実に整備を」 被害拡大防止へ専門家警鐘

西日本新聞 社会面 御厨 尚陽

 原発に設置が義務付けられたテロ対策の「特定重大事故等対処施設(特重施設)」の完成遅れにより、九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)は、16日に運転を停止した。特重施設は緊急時、遠隔操作で原発の安全を確保する「第2の対応拠点」となる。専門家は「日本の原発がテロ攻撃にさらされた場合、現状では被害の拡大を防ぐことは難しい」と警鐘を鳴らし、施設の着実な整備を求める。

 特重施設は航空機の衝突などのテロ攻撃によって原子炉が損傷した場合を想定し、100メートル以上離れた場所に設置。緊急時制御室や発電機、注水ポンプを備え、遠隔操作で原子炉を冷却し、放射性物質の大量放出を防ぐ役割を担う。川内1号機の特重施設は工事が難航し、九電は設置期限の延長を原子力規制委員会に求めたが、規制委は「完成まで代替策を講じるのは困難」との立場。九電は定期検査を前倒しする形で運転停止し、設置工事を進める。

 海外の原発をみると、1982年、フランスで建設中の高速増殖炉がロケット弾攻撃を受けた。2000年、シドニー五輪開催中にオーストラリアの研究用原子炉の爆破を計画していたイスラム原理主義過激派のグループを、当局が摘発。18年には、フランスの原発に環境保護団体のドローンが侵入した。原子力規制庁によると、海外では武装した民間警備員が警備業務に当たる原発も多いという。

 国内原発へのテロ攻撃の被害予測では、外務省が外郭団体「日本国際問題研究所」に委託し、1984年にまとめられた報告書がある。報告書は特定の原発名には触れていないが、厚さ2メートル近い鉄筋コンクリートの格納容器の壁が、貫通力を高めた爆弾で破壊される可能性があると指摘。電気系統と冷却機能を失うと放射性物質が周辺の都市部に拡散し、緊急避難しなかった場合は最大1万8千人が急死するなどと予測する。

 米ゼネラル・エレクトリックの元技術者で原子力コンサルタントの佐藤暁氏は「テロは計画的に実行されるため、自然災害よりも被害が深刻になる恐れがある」と指摘する。川内原発の安全性を検証する鹿児島県の専門家委員も務めており、「特重施設はテロが起きた際、少ない人数で原発をコントロールできる。万が一の事態に備え、しっかりと安全性を高めてほしい」と話した。 (御厨尚陽)

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