見込み捜査で始まった 検証・大崎事件(20)

西日本新聞 社会面

 事件から37年が過ぎた2016年。裁判所の勧告を受けて検察側が開示した証拠の中に、こんな写真があった。

 被害者宅での警察による実況見分を写した1枚。写真には「事件名 殺人被疑事件」「日時 昭和54(1979)年10月15日21時」と記すボードも写る。牛小屋での遺体発見から7時間後。遺体が堆肥に埋まっていた現場状況から、殺人事件と断定する形で捜査は始まっていた。

 当初から、原口アヤ子さん(92)らを犯人視していたことをうかがわせる捜査報告書も確認できた。遺体発見の翌16日付には、早くも「現場捜査結果と解剖所見から、被害者と面識がある者、または近親者などが敢行した殺人死体遺棄と判断される」とある。

 さらに、17日付の報告書には、アヤ子さんが79年夏ごろ、被害者に無断で事故死亡1千万円の生命保険に加入契約したと記載。「犯行動機と考えられるので、今後の取り調べで解明予定」とあった。

 劇場型犯罪のはしりとなった「別府3億円保険金殺人事件」が大分県別府市で起きたのは、この5年前。保険金目的の殺人事件は社会の注目度が高かった。

 だが、アヤ子さんらを有罪とした80年の一審確定判決は、親しい勧誘員の熱心な誘いを受けて契約していた点などを理由に、保険金目的を退けた。

 再審開始を認めた2002年の鹿児島地裁決定も、「アヤ子が『被害者に保険を掛けてあっで、いつかうっ殺すが』と話していた」などとする夫らの供述を、「見込み捜査を進める捜査官による不当な誘導がうかがわれる」と指摘した。

   ◇    ◇

 では、被害者が事件当日に自宅から1キロ余りの路上に倒れていた原因として、自転車ごと側溝に転落した事故の影響を警察は視野に入れていたのか。これも16年に開示された写真に、被害者が事件当日に乗っていた自転車が庭に無造作に置かれている様子が写る。

 遺体発見当日と翌日に実施された実況見分結果をまとめた分厚い調書に、被害者宅の自転車について「チェーンケースカバー下部がくぼみ、立パイプ部に縦4センチ、幅0・5センチにわたって細長く塗料がはげている」との記述がある。

 これが何を意味するのか。再審弁護団は、自転車に関する検証調書などの開示を検察側に求めたが、遠景写真が数枚開示されただけだという。

 アヤ子さんの再審申し立てを受け、1995年4月20日の南日本新聞に、事件当時、捜査を指揮した元鹿児島県警捜査1課長のコメントが載った。「現場状況などを総合的に判断し、身内による犯行の可能性もあると考え、検証には第三者を立ち会わせるなどして捜査は適正、慎重に行った。物証が乏しく証拠固めに苦労したが、供述などをもとにした検証で矛盾点は見当たらなかった。捜査には自信を持っている」

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