法相は「鬼門」のポスト 河合仁志

西日本新聞 オピニオン面 河合 仁志

 民主党政権時代、与党の幹事長が「鬼門だ」と嘆いた閣僚ポストがある。法務行政を取り仕切る法相。「赤レンガ」で知られる法務省の役所自体も、首相官邸から見れば北東の方角に位置する。

 確かに旧民主党にとって「良くない事柄」は相次いだ。最初の千葉景子氏は、現役法相として2010年の参院選で落選。後を受けた柳田稔氏も地元広島での集会で、国会答弁の「個別の事案については答えを差し控える」などを例に挙げ「法務大臣とはいいですね。二つ覚えときゃいいんですから」と発言し、就任からわずか2カ月で辞任に追い込まれた。

 政権末期の12年10月には、就任直後に外国人献金問題や暴力団関係者との交際が明らかになった田中慶秋氏が3週間で辞めている。政権時代の約3年3カ月で法相に就いた9人(臨時代理を除く)のうち3人が、志半ばで議席やポストを失ったことになる。

 「ありがたくない出来事」は民主党政権に限らないようだ。くしくも第2次安倍政権発足後、不名誉な耳目を集める法相は後を絶たない。

 14年9月に初入閣した松島みどり氏は、選挙区内でうちわを配った公職選挙法違反疑惑を巡り、1カ月半で辞表を提出。「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ法改正の審議で不誠実な答弁を繰り返した金田勝年氏も1年間の在任中、野党の厳しい批判にさらされた。

 昨年の参院選で初当選した妻の選挙運動を巡る公選法違反疑惑の渦中にいる河井克行氏の記憶も新しい。野党時代、前出の柳田氏を「法相の職を汚している」として最初に追及した人でもある。

 そして、現在の森雅子氏。弁護士資格を有し、特命担当相として特定秘密保護法の成立にも貢献した実績を買われ起用されたが、東京高検検事長の定年延長問題を巡って答弁の撤回や謝罪を頻発。今月12日には、自身の国会での「不適切発言」を安倍晋三首相から厳重注意されている。

 「身から出たさび」「そもそもの資質に欠けている」。永田町では、与野党を問わずそうした声が聞かれる。「法相はそんなに軽い役職なのか」という疑問も湧いてくる。無論、死刑執行命令書への署名や、検事総長に対する指揮権といった重大な権限を持つ立場にあり、過去には故後藤田正晴氏や江田五月氏ら重鎮クラスの起用例もあった。

 「首相には任命責任に加え、擁護した責任もある」。かつて柳田氏を辞任に追いやった河井氏の言葉だ。永田町の伝説はともかく、発した言葉は巡ってくることも肝に銘じた方がいい。 (東京報道部)

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