差別への複雑な思い表現 恵楓園入所者が油彩画展 福岡市・妙泉寺

西日本新聞 ふくおか都市圏版 山下 真

 国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」(熊本県合志市)の入所者による絵画クラブ「金陽会」の作品展が、福岡市城南区の妙泉寺で開かれている。国の強制隔離政策の下、療養所で暮らす入所者が、帰れぬ故郷や生き別れた家族、差別への複雑な思いを表現した油彩画など37点を展示する。無料。22日まで。

 金陽会は1953年に発足。会員が集まる金曜日にちなみ、太陽のように明るく活動を続けようと会の名を決めた。会員数は多いときに20人を超えたが、高齢化が進み、今でも絵を描くのは代表の吉山安彦さん(91)だけ。今回は故人も含め10人の作品を、制作時のエピソードを伝える文章とともに紹介した。

 恵楓園内には逃走防止用のコンクリート壁や、規則を破った入所者を閉じ込めた監禁室が残る。中原繁敏さん(1926~2014)の油彩画「鎖」は、隔離の象徴とされる壁と監禁室を暗い色調で描いた。

 隔離政策を定めたらい予防法は96年に廃止。その4年後に作品を描いた中原さんは「差別は絶対になくならない。口に出さないだけで、その感情はずっと残っている」と語ったという。

 監禁室に巻き付けられた鎖は、世間の差別に締めつけられ、身動きできない入所者の境遇を連想させる。

 木下今朝義さん(1914~2014)の油彩画「遠足」は、満開の桜と菜の花畑を見に行った小学校の遠足を、明るいパステル調で描いた。6歳でハンセン病を患った木下さんは、いつも学校で仲間外れ。みんなで列を作って歩いた遠足は、同級生らとともに行動した唯一の記憶だという。

 引き離された古里を題材にする作品も多い。吉山さんが3月に完成させた新作「宵待草」は故郷の天草の海を思い浮かべ、浜辺に並ぶ黄色の花々を描いた。人目をしのぶよう夜に咲く小花が、月明かりに照らされて輝きを増す。

 夫婦で訪れた福岡市中央区の尾崎由美さん(74)は「ただの風景画ではない。ハンセン病の苦しみだけでなく、純粋さや心の豊かさを感じます」と見入っていた。

 金陽会の本格的な作品展は福岡県では初めて。企画した木村真昭住職は「ハンセン病問題は理屈で理解しようとすると難しい。絵画なら、それぞれの人生や思いを身近に感じられる」と来場を呼び掛ける。同寺=092(871)0064。 (山下真)

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