性犯罪は女性に落ち度? 県警の対策炎上「的外れ」「偏見」

西日本新聞 社会面 川口 史帆

 性犯罪を減らそうと、福岡県警や福岡市が取り組む啓発活動が物議を醸している。夜は明るい道を選ぶ、防犯ブザーを持つ、など女性に自衛を求める内容ばかり。顔見知り間でも起きている現実とのずれもあり、インターネット上で「炎上」する事態にもなった。専門家は「まず加害者対策を」「被害者に落ち度があるかのような誤ったメッセージになりかねない」と問題視する。

 「美男子警察官」なるキャラクターが同県警の性犯罪対策のウェブサイトに登場したのは昨年11月。「君を守りたい」とし「遠回りでも明るい道を選ぶんよ」「物音をたてて抵抗するんよ」と方言で諭す。今年1月には「イケメン広報大使」に起用された男性アスリートが街頭でPRした。

 同市は「STOP!性犯罪」として、会員制交流サイト(SNS)で防犯ブザー携帯、男物の洗濯物を干すことなどを助言。2月からは「見知らぬ人が自宅に来訪。応対する時に気を付けることは?」などのクイズキャンペーンも始めた。

 県警の取り組みを、性被害の当事者団体やエッセイストらはネットで「性犯罪は女の問題だと思っている。的外れ」「イケメンの言うことなら女は聞くという偏見だ」と批判。市の取り組みも、被害者を支援する同市の女性(59)は「悪いのは加害者なのに。ただでさえ自分を責めている被害者を、より追い詰めるような内容だ」と憤る。

 犯罪白書によると、2018年の強制性交事件の64・8%、強制わいせつ事件の32・4%が容疑者と被害者に面識があった。「『見知らぬ人が屋外で性衝動に任せて』という古典的、ステレオタイプの性犯罪への対策でしかない。行政はむしろ『知人間でも起きている』と知らせ、対策や教育に重きを置くべきだ」。NPO法人福岡ジェンダー研究所理事長の窪田由紀九州産業大教授は指摘する。

 加害者更生に関わる精神科医の福井裕輝・性障害専門医療センター代表理事は「加害者は『夜に1人で歩いている方が悪い』など認知にゆがみがある人が多く、それを助長しかねない。ゆがみを正し加害者を生まない啓発を」と注文する。

 県性暴力根絶条例に基づく有識者会議は今月12日、行政の啓発に配慮を求める内容の報告書をまとめた。自己防衛の強調は被害者への二次被害を生み、被害を潜在化させかねないと指摘。「誤った固定観念」として加害者は見知らぬ人、夜遅い時間に出歩くと被害に遭う、などを例示する。

 県警は「路上犯罪対策で親しみやすいキャラをと考えて作ったが誤解された」と釈明。サイトに「悪いのは犯人!」などと加え、被害者を責めているわけではない点を強調した。市は「若者たちに防犯知識を広めることは大切。性犯罪を許さない機運が高まるよう、発信方法を考えたい」としている。 (川口史帆)

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