「助かった命なのに…」避難所の食、足りないおかず 場所による格差も

西日本新聞 くらし面 長谷川 彰

災害時の食を考える(1)

 東日本大震災から9年が過ぎた。この間、何度も自然災害が続発し、避難所に身を寄せる人も多数に上った。その都度、指摘されてきたのが「食」の問題だ。2月に神戸市で開かれた日本災害医学会でも「これでいいのか! 災害時の食と栄養」といったテーマで議論があった。研究発表などを踏まえ、改善に向けた課題について考える。

 「せっかく助かった命なのに、避難所で健康を損ね災害関連死を招いてしまうこともある。提供される食事の改善は、その予防に役立つ面が多い」

 学会でのセミナーでそう指摘したのは、国立健康・栄養研究所(東京)の国際災害栄養研究室、笠岡(坪山)宜代室長だ。

 東日本大震災の発生約1カ月後、笠岡室長ら支援チームは、被災地のある市で避難所(69施設)の食事の状況を詳しく調査。その結果、4分の1の避難所で穀類、つまり、おにぎりやパンなどの炭水化物の主食が過剰に提供されていた。

 一方で、おかずとなる野菜や肉類、魚介類などが過剰なほど提供された避難所は皆無に等しく、明らかに不足していた避難所が4分の1近くに上っていた。乳製品が不足していた所は4割を超えていた。

 カップ麺や菓子パンが過剰な避難所も目立ち、中には被災して下水道が使えないため、避難所の運営者にカップ麺の汁は捨てずに飲み干すよう求められたケースもあったとされる。「提供された食事によって、逆に健康が悪化しかねない状況も心配された」という。

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 また、ほぼ同時期に、宮城県の避難所(114施設)で提供された食事について、エネルギーと栄養素(タンパク質、ビタミンB1、B2、C)が、厚生労働省が示した摂取量の目安を満たしているかも調べ、3点満点で評価した。

 その結果、満点だった避難所はゼロ。いずれも目標値に達さず0点だった避難所は、ほぼ半数の47%に上った。一方、2点台と1点台がそれぞれ20%、1点未満が10%強あった。

 笠岡室長は「残念だが、避難所で提供された食事は量も質も不十分で、避難所による栄養格差も目立ったことがデータで裏付けられた」と話し、こうした状況は「今も大きく改善されてはいない」と指摘する。

 その点に関し、新潟大災害医療教育センターの高橋昌特任教授は、災害発生直後の段階では「傷病者の治療が最優先で、食事のサポートなど後回し」という意識が根強いからだと言う。

 食事をはじめ健康管理の問題は、医療よりも保健が担う分野だ。

 例えば避難生活の中で、肺炎を患い命を落とす高齢者は多い。そこで、なぜ肺炎か→食べ物などが誤って気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)が起きるから→なぜ誤嚥が起きるのか→食事をうまく食べられないから-などと分析を進めていく。

 そうすることで「医療関係者を含め、避難所で高齢者がきちんと食べられる食事をどう提供するかは大切なテーマだと認識されるはず」と言う高橋教授は「保健のスタッフが発災直後から現場に深く関与していく態勢を、もっと強化すべきだ」と強調する。

 次回の紙面で、2016年の熊本地震の際に避難所で行われた食に関する調査も踏まえ、もう少し掘り下げたい。

 (特別編集委員・長谷川彰)

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