千葉虐待死判決 幼い命を守る教訓は何か

西日本新聞 オピニオン面

 多くの人が胸を痛めた事件である。幼い命を虐待から救うための教訓をいま一度考えたい。

 千葉県野田市の小学生、栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=を虐待死させたとして、傷害致死罪などに問われた父親に、千葉地裁はきのう、懲役16年の実刑判決を言い渡した。

 父親は「しつけの範囲を超えて後悔している」と語りながらも、起訴内容の多くを否定していた。判決は「尋常では考えられないほど陰湿で凄惨(せいさん)な虐待だ」と認定した。従来の児童虐待事件に比べて重い量刑の背景には、事件が社会に与えた衝撃の大きさもあるのではないか。

 この事件では、心愛さんが虐待被害を打ち明けたアンケート回答の写しを父親に渡した市教育委員会や、一時保護を解除した児童相談所の対応なども問題視された。反省すべき点は反省し、社会が一丸となって虐待を防止せねばならない。

 昨年、虐待の疑いで全国の警察が児相に通告した18歳未満の子どもは約10万人で、過去最多を更新した。前年より2割も増えている。子どもの前でのドメスティックバイオレンス(DV)は心理的虐待に当たるとして通告することが定着してきた背景もあるという。

 心愛さんの事件でも、暴行を止めなかったとして傷害ほう助罪で有罪判決(執行猶予付き)が確定した母親はDVを受けていたとされる。千葉県の検証委員会は、DV被害の疑いがある母親と、心愛さんへの虐待を関連付けた対応が不十分だった-と指摘した。暴力が配偶者などを支配する手段として日常化している家庭で児童虐待のリスクが高いことは、過去の多くの事案でも報告されてきたことだ。

 虐待対策の中核である児相の体制整備と並行し、配偶者暴力相談支援センターなどとの連携を強化する必要もある。もちろん虐待への対応を児相任せにすることは現実的ではない。

 全国の市町村は児相や保健・医療、司法などの機関で構成する要保護児童対策地域協議会(要対協)を設けているが、十分機能していない地域もあるという。千葉県の検証委も、事件の背景として「ネットワークで支援する意識の欠如」を指摘している。自治体は関係機関の連携を改めて強化すべきだ。

 改正児童虐待防止法などが来月施行され、保護者による体罰が禁止される。日本社会の体罰に甘い風潮が「しつけ」と「虐待」の境を曖昧にしている、との指摘は以前からあった。

 「しつけの範囲」として許される暴力などない。この考えをしっかりと社会の常識にすることも、幼い命を救うために欠かせないことである。

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