「元夫の支配続く」消えない恐怖心…共同親権の法制化を危ぶむ声も

西日本新聞 くらし面 新西 ましほ

 ドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待の被害者や支援者からは、共同親権の法制化を危ぶむ声が上がっている。元夫からの「支配」が離婚後も続く恐れや、父母の関係が悪いと進学先や病気の治療方針などを決める際に合意が進まず、子の利益を害する恐れがあると訴える。

 子どもやDV被害者の安全が確保されていない現状では、共同親権は法制化しないでほしい-。ひとり親の支援団体でつくる「シングルマザーサポート団体全国協議会」は2月28日、共同親権の法制化に反対する署名1万708筆を森雅子法相に提出した。

 内閣府の2017年調査では、夫からDVを受けた経験がある女性は31・3%。NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」が会員など子連れで家を出た母親102人に聞き取りしたところ、9割が「精神的暴力があった」と答えた。

 赤石千衣子理事長は「声を上げにくい当事者の現状を置き去りにしたまま議論を進めないでほしい」と訴える。日本はDVや虐待に対する公的機関の介入が不十分と指摘し「共同親権下で同意が必要とされる進学先や転居などを決めるときに『同意してほしければ言うことを聞け』などと夫の支配が続く危険もある」と懸念する。

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 関東地方の40代女性は元夫と別居してから7年たった今も、小さな物音や人の気配に体がすくむ。

 「俺の言うことが聞けないのか」。気に入らないことがあると、元夫は物を投げ、壁やテーブルを殴った。直接殴られはしなかったが、振り上げた拳を寸止めされたり、投げ付けられた物であざができたりした。

 友人と出掛けると文句を言われ、外出中は何度も電話が入る。レシートがないと生活費はもらえない。気が向いたときは娘と遊ぶが、おむつ換えや保育園の送迎など、手がかかることは一切やらなかった。

 それでも結婚生活を続けようと、夫婦でカウンセリングを受け、自治体の相談窓口も利用した。だが、話し合おうとすると「うるさい」と怒鳴られて暴力が始まる。「命が危ない」。離婚の意思を告げ、娘が3歳になる前に家を出た。

 元夫に知られないように正社員に転職し、収入を確保。住む家と保育園を見つけたが、居場所を知られるのが心配で不眠に。母子生活支援施設に入居し、ようやく眠れるようになった。

 離婚が成立し施設を出た今も恐怖は消えない。「彼を怒らせないようにと、嫌なことも主張できず、言いなりだった。もし共同親権だったら、離婚後もあんな日々が続いていたかもしれない」と女性は語る。

 月に1度、面会交流の支援団体に仲介を頼んで、子どもを元夫に会わせるが、家まで後をつけられているかも、荷物にGPSを入れられているかもと、不安が付きまとう。家計は厳しく、面会交流の仲介料や交通費の負担も大きい。

 女性は「親だから会いたい気持ちは当然だし、娘にとっても父親の存在はプラスになるので会わせたい。でも、まずは安心して面会交流できる施設や見守りの仕組みを整えてほしい。共同親権の議論はそれからではないでしょうか」と話す。 (新西ましほ)

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